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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ウィリアム・ホープ・ホジスン『幽霊狩人カーナッキ』(角川文庫)

 本日の東京は久々の雪。先日も少し降ったが、今回のはちゃんと積もる雪である。案の定、鉄道や空路に影響が出ているようだが、そんな大雪というほどではないのだからもう少し何とかならんのかね。

 幽霊狩人カーナッキ

 読了本はウィリアム・ホープ・ホジスンの『幽霊狩人カーナッキ』。
 ホジスンといえば英国怪奇小説の大家。本書はその彼が書いたゴーストハントの連作集で、カーナッキはいうなれば超自然界のシャーロック・ホームズ。書かれた時代も実はホームズ譚とほぼ同じで、ホジスンも当時大流行した探偵ものをおそらく意識していたはずだ。
 ただ、カーナッキもホームズと同じく様々な事件を解決するとはいえ、必ずしも謎がすべて解かれるわけではない。彼の役目はあくまで怪異現象を鎮めることにある。本書の解説にもあるとおり、その役割は探偵というより陰陽師やシャーマンというべきなのだろう。
 気になったのは、事件が人間による企みの場合と、正真正銘の怪異現象の場合、両方があるということ。結末がどちらに転ぶかという興味はあるにせよ、本当なら超自然界のルールに則って論理的に解決、というのが理想だとは思うのだが、そこまで望むのは酷な話か。合理的に解決される場合でも何らかの怪異が起こったりすることを考えると、カーナッキのスタンスはやはりシャーマンなのだろう。
 まあ本格風味が薄いとはいえ、ゴーストハントものとしてはやはり面白い。カーナッキが怪異現象に対抗するべく入念な準備をする場面、この世のものではない何かが出現する場面など、執拗な語りはさすがに雰囲気十分。イメージを頭の中で膨らませつつ読むのが吉であろう。
 ホラーファンには今さらだろうが、たまには変わった探偵小説をよみたいというミステリファンにはおすすめである。

 なお、本日読んだのは角川ホラー文庫版だが、東京創元社のメルマガによると創元推理文庫でも近々刊行される模様。本邦初訳が一作含まれるそうだが、その他の収録作とかの違いはあるのかな?


Comments

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>Sphereさん
あ、最後の一篇はそういうことなんですね。どうも情報ありがとうございます。

時代のせいも大きいのでしょうが、シリーズの在り方があまり徹底されておらず、若干ゆるいところが逆に味になってますね。いいか悪いかは抜きにして、けっこう好きです、こういうの。
まあ、いつもいつも読むのではなく、たまに読むなら、という条件付きですが(笑)。

Posted at 21:15 on 07 25, 2010  by sugata

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ミステリ好きとしては、ホックのサイモン・アークの方がいいなと思いますが、カーナッキもまた別の味わいがあって好きです。
結界の中に怪異の元となる指輪と自分がいっしょに入っちゃってあわわと動揺したり、逃げ出して戻ってみると残していった結界を見て犯人達が笑ってたりとか、格好悪いところも面白いし。
あと電気式五芒星を想像すると、どうしてもイルミネーションみたいでありがたみが感じられない…
笑いと怖さと面白さが入り交じった作品でした(^^;

創元推理文庫で読みましたが、こちらは最後に「探偵の回想」という一編が加わっています。でもこれは最初の方の短編4つのあらすじを紹介したようなもので、独立した小説というわけではありませんでした。

Posted at 20:03 on 07 25, 2010  by Sphere

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ぜひどうぞ、
って、私も『異次元を覗く家』は長らく積ん読なので、これは読んどかないと。それこそラヴクラフトに影響を与えた傑作ですものね。

Posted at 01:06 on 02 07, 2008  by sugata

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どうもありがとうございます。
また読んでみてくなりましたよ。

Posted at 17:31 on 02 06, 2008  by kenn

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Kennさん

そう、『異次元を覗く家』の人ですね。今では一定の評価をされていますが、若くして亡くなったこともあって、当時はそれほど売れっ子というわけではなかったようです。
また、ホジスン自身は特にクトゥルー系というわけではないですが、そのクトゥルーの生みの親ラヴクラフトがホジスンを高く評価しており、そのおかげでホジスンの名が広く知られるようになった、という話があるそうです。私も幻想系はそれほど強くないので、このへんでご勘弁を。

Posted at 00:55 on 02 05, 2008  by sugata

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ホジスンといえば、『異次元を覗く家』でしたっけ?  
クトゥルー系だったのかなぁ、だいぶ前に読んだ覚えがあります。
ずいぶん昔の人だと思うんですが、再評価とかされてるんでしょうか? 

Posted at 12:34 on 02 04, 2008  by kenn

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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