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 リンクに『雑誌店*歴下亭』を追加。ネット古書店の店主さんがやっている「雑誌の蘊蓄」系ブログとでもいいましょうか。単に情報としても面白いのだが、むしろ取り上げている雑誌に対する店主さんの思いみたいな話が楽しい。

 悪魔はすぐそこに

 昨年度の『このミス』では海外5位にランクされ、評判もなかなかよろしいD・M・ディヴァインの『悪魔はすぐそこに』を読んでみた。こんな話。

 ハードゲート大学の経済学講師ハクストンは、横領容疑で免職の危機に立たされていた。亡き友人の息子でもある数学講師のピーターに助力を請うも事態はさほど好転せず、ついにハクストンは大学の協議会で教授たちに脅迫めいた言葉まで吐く始末。だが、それからまもなく。ハクストンは変死を遂げ、さらには図書館で学生が殺害される。相次ぐ事件に関係はあるのか、調査が進むうち、八年前に起こった忌まわしい事件が浮かび上がってきた……。

 おお、確かになかなか見事な出来だ。かつて現代教養文庫で刊行された作品群も悪くはなかったが、本作もそれに匹敵するかそれ以上である。もともと派手なトリックメイカーではないので、ケレンを求める向きには物足りないかもしれないが、この丹念な人物描写、そしてその人物描写ゆえに活きてくる真相は読み応え十分。英国のトラディッショナルな本格探偵小説をお好みの御仁にはぜひともの一冊。
 ところで本書の解説によると、まずミステリとしてのプロットありきで、それが最大限の効果をもつように人物が最適化されているとあるが、本当のところはどうなのか。そもそも人物描写が巧みかどうかは作家の重要な資質であり、下手な作家がキャラクターの最適化を試みようがどうしようが、ダメなもんはダメだろう。ディヴァインが実際にそういう執筆の仕方をとっていたのかどうか気になるところではある。
 ただ、本作品が、その丹念で巧みな人物描写の上に成り立っていることは確かだ。本作は三人称多視点で語られており、しかも中心となる人物はある程度限定されている。拙い描写では読者に簡単に真相を見抜かれることにもつながろう。これは当然ながら作者の挑戦であり、あらためて犯人の言動などを読み返すと、実に細部にまで描写に気を配っていることがわかる。同じストーリーで下手な作者が書いても、おそらくここまでの成果は得られないはずだ。
 繰り返しになるが、本作は決して派手な作品ではない。だが、探偵小説を読む楽しさは本書のようなタイプにこそあるのだ。うん。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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