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 乱歩の『三角館の恐怖』の原案となった、『エンジェル家の殺人』の作者。ロジャー・スカーレットといえば、ひと頃前まではそんな文脈でしか語られなかった幻の作家である。ところが時代は変わるもので、『エンジェル家の殺人』はもとより、昨今のクラシックブームに乗って、今では『猫の手』や『ローリング邸の殺人』といったところも着実に紹介が進んできた。今ではわざわざ乱歩を持ち出すまでもなく、地味ながら安定した実力を備えた黄金期の本格探偵小説作家、という認識で問題はないだろう。
 本日の読了本はそのロジャー・スカーレットのデビュー作、『ビーコン街の殺人』。かつて『密室二重殺人事件』というタイトルで抄訳されていた一冊である。こんな話。

 ビーコン街の殺人

 ビーコン街にあるサットン家のパーティーに招待された弁護士アンダーウッド。成り上がり者の主人サットンの言動には閉口していたものの、招待客の中にミセス・アーンセニイの姿があることに驚く。サットンの友人とは思えないほど洗練された彼女に対し、崇拝していると言っても過言ではないほどの態度を見せるサットン。やがてサットンは彼女と共に二階へ姿を消したが、程なくして起こる女性の叫び声。そして銃弾に倒れたサットンの死体。犯人は果たしてミセス・アーンセニイなのか。そして起こる第二の悲劇……。

 とにかく、真面目に本格探偵小説を書こうとしているその姿勢がいい。登場人物はもともと限られているが、そこから容疑者を五人に絞り、さらに一人ずつ潰していく展開もあっぱれ。とにかくストレート一本で勝負、といった感じだ。
 これでアッと驚くほどの仕掛けがあれば言うことはないのだが、残念ながらそこまでの力はまだなかったようだ。旧題にあるように『密室二重殺人事件』というのがミソだとは思うが、ううむ、この程度の密室では少々辛かろう。結論を言うと、翻訳されたなかでは一番不満の残る作である。ただ、先に書いたように、本格たらんとするそのスタイルは実に気持ちがよい。本格マニアなら、ロジャー・スカーレットのデビュー作という点だけでも読んでおいていいだろう。

 さあ、あとは『白魔』を残すのみか。論創社さん、ぜひこれも新訳、頼みます。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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