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 日本の探偵小説界黎明期を背負って立った森下雨村。探偵小説の父とまで評されるその彼の生涯と功績を綴った評伝集が、本日の読了本である。著者はなんと雨村の次男である森下時男氏。

 探偵小説の父森下雨村

 しかしまあ、森下雨村があの『新青年』の初代編集長として、日本に探偵小説を根付かせた一大功労者であることは知っていたものの、彼の生涯を追っていくことが、そのまま日本探偵小説界の歴史になっていることに、あらためて驚きを禁じ得ない。確かに黒岩涙香という先達はいたが、ある程度明確な意志と行動をもって探偵小説という存在を世に知らしめようとしたのは、おそらく雨村が最初であろう。
 編集者としてはもちろんだが、作家、翻訳者としても活動し、何より名プロデューサー、名プランナーとして辣腕を奮った。幾多の海外の名作を日本に紹介し、国内の作家を育て、市場を開拓していく様は圧巻である。雨村の元に人が集まり、その集まった人が雨村の教えをさらに広めていくといえばよいか。乱歩、不木、正史……そうそうたる作家が彼に見出され、さらに彼らが次の作家を育てていった。大げさではなく、雨村なくして日本の探偵小説界はなかったに違いない。

 そんな偉大なる功労者、森下雨村に関する評伝が、これまで一冊も出ていなかったことも、考えれば不思議な話である。比較的早い時期に探偵小説界から足を洗ったこと、あくまでその業績が裏方としてのものであり、一般読者に対する知名度がやはり乱歩らに比べれば格段に落ちることなどが、理由として推測できるが、まあ、先日は論創社から『森下雨村探偵小説選』も出たことだし(『丹那殺人事件』丸ごと収録というからこちらも凄い)、これをきっかけにもう少し雨村の研究が進んでもいいと思う次第。できれば小説の方もガンガン復刻されるといいなぁ。
 なお、贅沢を言わせてもらえるなら、著作リスト等はやはりつけてほしかったところである。
 それでも探偵小説マニアなら本書は必読。悲しいかな書店ではちょっとお目にかかりにくい本なので、購入をお考えの方はネットショップが無難であろう。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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