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ジム・トンプスン『失われた男』(扶桑社ミステリー)
今さら土曜日の話ではあるが、玉川上水沿いにある「羽村の堰」というところで、桜を見物してくる。それほど広くないところにびっしりと桜および露店が出ているものだから、なかなかけっこうな熱気で悪くない。規模でいったらもっと派手な桜の名所はいくらでもあるが、こういう地元の隠れた名所もいいなぁ。
本日の読了本はジム・トンプスンの『失われた男』。
主人公はクリントン・ブラウンという地方紙の新聞記者。記事はもちろんコラムにも長け、詩作にもふける切れ者の男である。だが性格は極めてルーズで昼間から酒をくらい、同僚や上司をも罵倒するような、極めて退廃的な生活を送る男でもあった。だが、そんなブラウンに周囲の者はなぜか真っ向からぶつかることをせず、ブラウンはブラウンで何やら秘密を抱えている様子。そんな彼のもとに別れた妻が現れ……。

本作はブラウンの一人称で語られる。それは正に、アル中患者が思いつくままに書き記した日々の記録のようでもある。彼の一挙手一投足がどのような悲劇を巻き起こしていくのか、読者は感情移入もできないまま、いずれ訪れるであろうカタストロフィを見届けるため、ただひたすらに読み続けなければならない。
数あるトンプスンの著作の中でも、本書はミステリーからはいろいろな意味でかなり遠いところにきているわけだが、とりあえずそんな戯れ言は気にしなくていい。まずは予備知識なしで、ストレートにこの狂気と暴力の世界を味わってほしい。ああ、嫌だ嫌だなどと拒否反応を覚えつつもそこを頑張って読む。そしてラスト、この狂気の世界の在り様にぶちのめされてほしい。万人に、とは言い難いものの、結局はおすすめ。
本日の読了本はジム・トンプスンの『失われた男』。
主人公はクリントン・ブラウンという地方紙の新聞記者。記事はもちろんコラムにも長け、詩作にもふける切れ者の男である。だが性格は極めてルーズで昼間から酒をくらい、同僚や上司をも罵倒するような、極めて退廃的な生活を送る男でもあった。だが、そんなブラウンに周囲の者はなぜか真っ向からぶつかることをせず、ブラウンはブラウンで何やら秘密を抱えている様子。そんな彼のもとに別れた妻が現れ……。

本作はブラウンの一人称で語られる。それは正に、アル中患者が思いつくままに書き記した日々の記録のようでもある。彼の一挙手一投足がどのような悲劇を巻き起こしていくのか、読者は感情移入もできないまま、いずれ訪れるであろうカタストロフィを見届けるため、ただひたすらに読み続けなければならない。
数あるトンプスンの著作の中でも、本書はミステリーからはいろいろな意味でかなり遠いところにきているわけだが、とりあえずそんな戯れ言は気にしなくていい。まずは予備知識なしで、ストレートにこの狂気と暴力の世界を味わってほしい。ああ、嫌だ嫌だなどと拒否反応を覚えつつもそこを頑張って読む。そしてラスト、この狂気の世界の在り様にぶちのめされてほしい。万人に、とは言い難いものの、結局はおすすめ。
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Comments
Edit
はじめまして
〉読者は感情移入もできないまま、いずれ訪れるであろうカタストロフィを見届けるため、ただひたすらに読み続けなければならない。
この部分に激しく同意をしてしまいました(笑)
本当にラストのあの読後感を味わうために
ある種の苦行を強いる感じが
非常に伝わってきて本当に納得してしました。
また、遊びに来ます。
Posted at 18:27 on 04 14, 2008 by きみやす
きみやすさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
とにかくストレスの溜まる作品ですよね(笑)。
もっと非道で残虐な主人公は他の作品にもいるのですが、本作の主人公はひたすら不愉快で、最初はトンプスンの作品でもワーストに値するのではないかと思っておりました。
それがあのラスト。
嫌な思いを味わってこその、あのエンディングなんですよね。
それにしてもトンプスンがこういう作品をどの程度計算尽くで書いていたのか、私の疑問はいつもそこに行きついてしまいます。
Posted at 00:42 on 04 15, 2008 by sugata