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ジム・トンプスン『取るに足りない殺人』(扶桑社)
ジム・トンプスンの『取るに足りない殺人』を読む。トンプスンも好きな作家で、再評価されて着実に翻訳が続いているのは誠に喜ばしい限り。まだ『鬼警部アイアンサイド』や『失われた男』も未読なので、大事に読まなければ。
主人公のジョー・ウィルモットはある田舎町の映画館オーナー。過去に傷を持つ身ではあったが、結婚した妻の経営していた映画館を引き継ぐや、持ち前の切れる頭を頼りにビジネスを伸ばしてきた。だが、その手口は犯罪まがいのことも多く、自然と敵も増えてきている。そんなジョーの前に、妻のエリザベスがキャロルという家政婦を連れてきた。不細工な女性ながら、なぜかジョーはキャロルと関係をもってしまい、それはたちまちエリザベスの知るところとなった。一方、巨大映画館グループが、ジョーの映画館を潰しにかかる動きを見せはじめていた。公私ともども追いつめられていくジョーが、起死回生に放った作戦とは?
犯罪者が堕ちるべくして堕ちてゆくパターンは同じだが、いつもの破天荒な感じが影を潜め、意外にしっかり物語が構成されている印象。解説によると本書はトンプスンが乱作期に入る前に発表された小説であり、心の余裕がそうさせた、という説明がなされている。
通常と逆のような気もしないではないが、トンプスンの場合は乱作によって花開いた部分が大きいので、どっちがいいとは一概にいえないのが難しいところだ。確かにキャラクターの造形はすでに高いレベルにあるし、後の作品に見られる無常観や不条理な要素もふんだんに盛り込まれているが、『内なる殺人者』や『ポップ1280』のような独特の緊張感には及ばない。人の好みも出るだろうが、どちらがトンプソンらしいかと言えば、やはり後者だろう。
ある意味、トンプスンの入門書として、本書は最適なのかもしれない。
主人公のジョー・ウィルモットはある田舎町の映画館オーナー。過去に傷を持つ身ではあったが、結婚した妻の経営していた映画館を引き継ぐや、持ち前の切れる頭を頼りにビジネスを伸ばしてきた。だが、その手口は犯罪まがいのことも多く、自然と敵も増えてきている。そんなジョーの前に、妻のエリザベスがキャロルという家政婦を連れてきた。不細工な女性ながら、なぜかジョーはキャロルと関係をもってしまい、それはたちまちエリザベスの知るところとなった。一方、巨大映画館グループが、ジョーの映画館を潰しにかかる動きを見せはじめていた。公私ともども追いつめられていくジョーが、起死回生に放った作戦とは?
犯罪者が堕ちるべくして堕ちてゆくパターンは同じだが、いつもの破天荒な感じが影を潜め、意外にしっかり物語が構成されている印象。解説によると本書はトンプスンが乱作期に入る前に発表された小説であり、心の余裕がそうさせた、という説明がなされている。
通常と逆のような気もしないではないが、トンプスンの場合は乱作によって花開いた部分が大きいので、どっちがいいとは一概にいえないのが難しいところだ。確かにキャラクターの造形はすでに高いレベルにあるし、後の作品に見られる無常観や不条理な要素もふんだんに盛り込まれているが、『内なる殺人者』や『ポップ1280』のような独特の緊張感には及ばない。人の好みも出るだろうが、どちらがトンプソンらしいかと言えば、やはり後者だろう。
ある意味、トンプスンの入門書として、本書は最適なのかもしれない。
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