- Date: Tue 15 04 2008
- Category: 海外作家 オルツィ(バロネス)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
- Response: Comment 7 Trackback 0
バロネス・オルツィ『紅はこべ』(創元推理文庫)
バロネス・オルツィといえば、ミステリファンにとっては「隅の老人」もしくは「レディ・モリー」の産みの親、という認識が一般的だろうけれども、どうやら世間的には歴史ロマン『紅はこべ』の作者の方がとおりがいいようだ。
この歴史ロマンというやつがなかなか曲者で、字面どおりに受け取れば、史実を基にした小説ということになるのだが、ヨーロッパの人たちにとっては単なる歴史小説ではない。それはあくまで歴史ロマンという独立したジャンルであり、絶対的な娯楽である。
それは作家にとっても同様らしく、単に小説家になりたいのではなく、歴史小説で名を成したいという者が数多いたようだ。あのコナン・ドイルも正にその一人。そしてオルツィも然り。
オルツィの小説で最初に人気を集めたのは「隅の老人」だが、実はもともと書いていた歴史ロマンがまったく売れなかったらしい。で、「隅の老人」で作家として成功した後に、ようやくこの『紅はこべ』が陽の目を見たというのだ。
話を元にもどすと、成功後の『紅はこべ』は歴史ロマンの定番として認知されるまでになり、続編も十作以上書かれ、舞台や映画化も一度や二度ではない。最近でも1997年にブロードウェイでミュージカルとなり、1999~2000年にはイギリスでテレビ化され、驚いたことに日本でもNHKで放送されていたという。さらに仰天したのは、なんと今年、宝塚でも公演予定があるとのこと。
ミステリ作家として今までバロネス・オルツィを読んできた者にとって、これはある意味ショック。時代はいつの間にか『紅はこべ』だったのだ(笑)。

どうでもいい蘊蓄ばかりになってしまったが、そろそろ内容の話でも。
時は一八七九年。ヨーロッパ全土を動乱に巻き込んだフランス革命が勃発した。民衆の不満が爆発し、共和政府によってフランスの貴族は貴族であるというだけで捕らえられ処刑されていく。そんな中、囚われの貴族を次々と救ってはイギリスに亡命させる、あるイギリス人の秘密結社が出現した。その名も「紅はこべ」。共和政府は「紅はこべ」の正体を探べく、革命政府全権大使ショーヴランをイギリスに送ったが……。
予定調和的ではあるが、この手の物語はそれが大前提なので、いうだけ野暮か。とにかくストーリーはさすがに大したもので、冒険に愛と友情をこってりとミックスし、ぐいぐいと引っ張っていく。もうど真ん中である。「紅はこべ」の首領の正体は誰かというミステリー的な趣向(バレバレではあるが)も楽しい。
芝居がかった言動は今読むと引いてしまうところもないではないが、逆にこれがあるからこその歴史ロマンであり、あまりスマートに描かれたり、合理的な考え方の連中ばかりが登場しては、あえて読む意味もなかろう。動乱の時代とはいいながら、紳士はあくまで紳士らしく、淑女は淑女らしく、庶民が憧れる貴族の夢の物語でなければならないのだ。
ということは、これってもしかして歴史ロマンというより、ハーレクインロマンスといった方が近いのか。史実を題材にしてはいるが、それはやはり味つけ以上のものではないし、基本的にヒロインを中心に物語が回っていることや、恋愛シーンの多さなどを踏まえても、これはやはりロマンスメイン。なるほど、宝塚でミュージカルになるのも頷ける話だ。
しかしながら、個人的には最近この手の小説を読んでいなかったので、予想以上に楽しめたのは確か。テレビ版もちょっと気になるぞ(笑)。
この歴史ロマンというやつがなかなか曲者で、字面どおりに受け取れば、史実を基にした小説ということになるのだが、ヨーロッパの人たちにとっては単なる歴史小説ではない。それはあくまで歴史ロマンという独立したジャンルであり、絶対的な娯楽である。
それは作家にとっても同様らしく、単に小説家になりたいのではなく、歴史小説で名を成したいという者が数多いたようだ。あのコナン・ドイルも正にその一人。そしてオルツィも然り。
オルツィの小説で最初に人気を集めたのは「隅の老人」だが、実はもともと書いていた歴史ロマンがまったく売れなかったらしい。で、「隅の老人」で作家として成功した後に、ようやくこの『紅はこべ』が陽の目を見たというのだ。
話を元にもどすと、成功後の『紅はこべ』は歴史ロマンの定番として認知されるまでになり、続編も十作以上書かれ、舞台や映画化も一度や二度ではない。最近でも1997年にブロードウェイでミュージカルとなり、1999~2000年にはイギリスでテレビ化され、驚いたことに日本でもNHKで放送されていたという。さらに仰天したのは、なんと今年、宝塚でも公演予定があるとのこと。
ミステリ作家として今までバロネス・オルツィを読んできた者にとって、これはある意味ショック。時代はいつの間にか『紅はこべ』だったのだ(笑)。

どうでもいい蘊蓄ばかりになってしまったが、そろそろ内容の話でも。
時は一八七九年。ヨーロッパ全土を動乱に巻き込んだフランス革命が勃発した。民衆の不満が爆発し、共和政府によってフランスの貴族は貴族であるというだけで捕らえられ処刑されていく。そんな中、囚われの貴族を次々と救ってはイギリスに亡命させる、あるイギリス人の秘密結社が出現した。その名も「紅はこべ」。共和政府は「紅はこべ」の正体を探べく、革命政府全権大使ショーヴランをイギリスに送ったが……。
予定調和的ではあるが、この手の物語はそれが大前提なので、いうだけ野暮か。とにかくストーリーはさすがに大したもので、冒険に愛と友情をこってりとミックスし、ぐいぐいと引っ張っていく。もうど真ん中である。「紅はこべ」の首領の正体は誰かというミステリー的な趣向(バレバレではあるが)も楽しい。
芝居がかった言動は今読むと引いてしまうところもないではないが、逆にこれがあるからこその歴史ロマンであり、あまりスマートに描かれたり、合理的な考え方の連中ばかりが登場しては、あえて読む意味もなかろう。動乱の時代とはいいながら、紳士はあくまで紳士らしく、淑女は淑女らしく、庶民が憧れる貴族の夢の物語でなければならないのだ。
ということは、これってもしかして歴史ロマンというより、ハーレクインロマンスといった方が近いのか。史実を題材にしてはいるが、それはやはり味つけ以上のものではないし、基本的にヒロインを中心に物語が回っていることや、恋愛シーンの多さなどを踏まえても、これはやはりロマンスメイン。なるほど、宝塚でミュージカルになるのも頷ける話だ。
しかしながら、個人的には最近この手の小説を読んでいなかったので、予想以上に楽しめたのは確か。テレビ版もちょっと気になるぞ(笑)。
- 関連記事
-
-
バロネス・オルツィ『土耳古石のボタン』(湘南探偵倶楽部) 2021/09/18
-
バロネス・オルツィ『隅の老人【完全版】』(作品社) 2014/07/27
-
バロネス・オルツィ『レディ・モリーの事件簿』(論創海外ミステリ) 2013/12/01
-
バロネス・オルツィ『紅はこべ』(創元推理文庫) 2008/04/15
-
>短編集三冊を、日に三編ずつ、一冊5日間で読んだと思うと普通なような(^_^;)
いやいや、計算上はそうでも、あれだけのボリュームを一定のペースで読むのはなかなか。長篇ならまだ何とかなると思いますが、短篇集は途中でだれるときもありますからね。
何よりあれを持ち運んで読むというのが偉いです(^_^;)