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 久々に気持ちのいい天気の休日だが、とにかく昨日から眠る眠る。昼頃までたっぷり睡眠をとったあとは愛犬と公園をはしごし、帰ってきてからはふたたび昼寝。まあ、これだけ寝たのも久しぶりで、少しは疲れも解消できた感じ。


 一ヶ月ぐらいかけてボチボチ読んできた、中野美代子の『綺想迷画大全』を読み終える。
 古今東西の幻想的な絵画を集め、エッセイ風に解説した本だが、これが実に面白い。こちとら絵画に関してはまったく素人なので、もとより技術的なところなど大した理解はできない。もっぱら興味は絵のテーマであったり、その主義思想、文化的背景などに向きがちなのだが、本書に収められている絵画も専らそのような、「読み応え」のあるものばかり。

 綺想迷画大全

 例えばマルコ・ポーロの『東方見聞録』に描かれた、一本足でそれを傘のように使う人間(スキヤポデスというらしい)の絵など、皆さんも何かの本やテレビで見たことがあるはず。
 東洋にそんな怪物がいたのか、という疑問はもっともだが、そもそも『東方見聞録』自体の出自がかなりいい加減。今では『東方見聞録』がマルコ・ポーロの正式な書物でないことを知っている人は多いだろう。実は『東方見聞録』は第三者による聞き書きの本であり、その本からさらに様々な写本が生まれて、我々が『東方見聞録』だと思っているのも、そのような写本の一冊なのである。そんな成り立ちのもとに生まれた本には、次第に第三者の思惑や創作までが入り交じってくる。先ほどのスキヤポデスももちろん東洋で本当に見聞きしたものではなく、すでに以前から西洋では知られたキャラクターであり、当時の他のまったく関係ない本でもひんぱんに登場していたりするのだ。

 なんていう蘊蓄が満載で、とにかく絵そのものは珍獣やら不思議な空間ばかり。理屈抜きでも楽しいのだが、上のような解説つきで読むと、面白さも倍増である。
 著者の中野美代子は中国文学が専門で、最近だと岩波文庫の『西遊記』の新訳なども著しているお方。けっこうなお歳のはずなのだが、これがまた軽妙でユーモラスな文章を用いてくれるので、難しい話もすんなり頭に入ってくる。
 値段は少々高めだが、図版は豊富で印刷製本にも気を配った好著。この手の本が好きな人なら間違いなくおすすめの一冊である。
 もし、この本に収録した絵画を集めた展覧会があるなら絶対観にいくのだがなぁ。どこかの美術館で企画してくれないものか。


テーマ:ノンフィクション - ジャンル:本・雑誌




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