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 読書のペースを取りもどそうと、安心して読めるシリーズものに手を出してみる。トリックとか派手な要素はなくてもかまわない。まずは作品ごとのムラが少ないもの。何より読後に深い余韻の残るもの。そういうものこそ読書のリハビリにはふさわしい。個人的には、シムノンのメグレものがそれにあたる。本日の読了本はジョルジュ・シムノン『メグレ警視と生死不明の男』。

 メグレ警視と生死不明の男

 メグレのもとへ、部下のロニョン刑事の夫人から連絡が入る。何でも直々にあって相談したことがあるという。自宅を訪ねたメグレが聞いた話は驚くべきものだった。ロニョンが姿を消し、その隙を狙うかのように、自宅へギャングが押しかけたというではないか。<無愛想な刑事>として知られるロニョンの身に、いったい何が起こっているのか……。

 本作の前半で物語の中心にいる男ロニョンは、ポケミスの『メグレと無愛想な刑事』でもお馴染みの刑事。仕事もでき真面目な性格だが、いかんせん被害妄想が強いことから周囲の刑事たちとは馴染めず、気難しいことでも知られている。
 そんなロニョンがたまたま奇怪な事件に巻き込まれるところから物語は幕を開ける。このあたりはいつものペース。ロニョン夫人や本人との会話から、ロニョンの人となりがじわじわと炙り出される。この辺りは常套手段ながら本当に巧い。だが本当に唸らされるのは、ロニョンがギャングに連れ去られるという事件以降。ただでさえ複雑なロニョンの人柄が、この事件でさらにどう転ぶかわからなくなる。ロニョンに対するメグレの反応も見どころである。

 ちょっと意外だったというか、実は少し物足りなかったのが中盤以降。このままロニョンを中心に置いておくのかと思いきや、本作のもうひとつの胆であるギャングとの対峙に流れが移る。
 というか、そもそも本作の本来のテーマは、メグレがプロの犯罪者たるアメリカのギャングたちといかに戦うか、というところにあるようで、派手なアクションシーンなども珍しく盛り込まれている。そういう意味では自然な流れといってもよいのだが、ううむ、個人的にはあくまでロニョンを最後まで中心に置いてほしかった。焦点が途中から微妙にずれる感じで、なんだかシムノンにはぐらされた気がするのである。
 時期的に油の乗っている頃の作品だけに、少し期待しすぎたかな。悪くはないんだけれど。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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