ADMIN TITLE LIST
 読了本は『メグレ警視のクリスマス』。表題中編のほかに「メグレと溺死人の宿」「メグレのパイプ」という2短編を収録した中短編集である。

Un Noël de Maigret「メグレ警視のクリスマス」
L'Auberge aux noyés「メグレと溺死人の宿」
La Pipe de Maigret「メグレのパイプ」

 メグレ警視のクリスマス

 「メグレ警視のクリスマス」は、クリスマスの夜、部屋に現れたサンタクロースの謎を探る一編。導入部の奇妙な味わいやメグレが自宅で指揮をとったりするのは、メグレものには珍しい趣向でなかなか楽しい。真相に導く展開も上手いが、同時に人間の愚かしさや哀しさもきっちりと描き出すのはシムノンならでは。
 なお、クリスマス・ストーリーとして『EQMM』に掲載された本作だが、クイーンによればクリスマス・ストーリーにはいくつかの約束事があるそうで、ひとつは「子供を登場させる」こと、もうひとつは「奇蹟がなければならない」ことらしい。本作はその両方を満たした佳作。

 「メグレと溺死人の宿」は、交通事故が発端。夜中にトラックが停車していた車と衝突、車は川に転落したが、引き上げてみると乗っていたはずのカップルは見当たらず、それどころかトランクにはなんと女の死体が、というお話。本格仕立てでメグレの捜査や推理はいつになく鮮やか。なんとなくコロンボにもありそうなお話で、これもなかなか悪くない作品。

 「メグレのパイプ」は、愛用のパイプを無くしたメグレがそのパイプを探すうち、いつしか事件に……という物語。構成も巧みで、パイプをいつまで持っていたのか、メグレが自分の記憶をたどっていく導入部はとりわけ秀逸。パイプがないときのメグレの言動やラストも印象的で、シムノンがお気に入りの作品と言っているのもよくわかる。

 長らく絶版の本書だが、これは予想以上に堪能できた。まあ本書に限らず、シムノンの過去の作品のほとんどが絶版という状況だから、ここはひとつ過去にメグレ全集を出していた河出書房新社あたりが責任をもって、完全版のメグレ全集(さすがにシムノン全集とは言わないから)を刊行してもらえないものだろうか。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 探偵小説三昧, All rights reserved.
ネット小説