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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


『アース earth』&『魔法にかけられて』

 ハヤカワ文庫でミステリやらSFやらがいろいろと復刊されたもよう。めぼしいものはないかいなと、書店の店頭でちょっと眺めていたのだが……ううむ、遙か昔にリアルタイムで読んだものがほとんどではないか。最近は復刊フェアがあっても自分が若い頃に読んだものが多くて、つくづく自分が年をとったことを再認識させられてしまう(苦笑)。
 それはともかく。ちょっと驚いたのは、こんなものまで品切れになっていたのかという事実である。今回の復刊でもミステリ関係では、アンドリュー・ガーヴ『ヒルダよ眠れ』、ジョン・スラデック『見えないグリーン』、ルシアン・ネイハム『シャドー81』、マーティン・クルーズ・スミス『ゴーリキー・パーク』といったところが並ぶ。おいおい、全部その作家の代表作ばかりじゃないか。しかもミステリの歴史上からみて重要な作品も多い。多少のお好みはあるだろうが、どれも傑作ばかりなので未読の人はこの機会にぜひ。
 個人的にオススメなのは(厳密には冒険小説になってしまうんだけど)、一発屋の最高峰とも言える『シャドー81』。個人的には冒険小説を読むきっかけになった作品でもあり、それまでの本格系メインだった趣味の幅が大きく変わった一冊である。いまでは掃いて捨てるほどあるハイテク軍事サスペンスだが、本書はその嚆矢でもあり、今読んでもメインのネタは新鮮……と思いたいが、さすがにちょっと古いか(笑)。でも普段は冒険小説など読まないという本格ファンも、こればかりは読んでみてほしい。単に冒険小説や軍事ミステリという範疇に収まらないアイディアが楽しい。


 最近観たDVDの感想など。
 『アース earth』はBBCが制作した環境保護系のドキュメンタリー映画である。映画は冬を越したシロクマ親子の愛らしい姿で幕を開けるが、実はその親子の運命が既に危機にさらされていることを、観る者はまもなく知らされる。そして、その危機の原因は地球温暖化にある。
 映画はシロクマ以外にもさまざまな動物たちの過酷な生活を映し出す。そして実はそれらの過酷な状況も、ことごとく人間が間接的に作り出してしまったものばかりなのだ。特に声高には叫んでいないが、この執拗に繰り返される映像を通じてのメッセージこそが本作の肝である。
 映像の美しさに感動し、動物たちの生きる姿に感動する。その気持ちがあるのなら、地球を救うのは「まだ間に合う」とのナレーションと共に映画は幕を閉じる。その手法はややあざとくもあるのだが、ドキュメンタリーだからこそ制作者のメッセージは逆に重要なのである。ここは素直に制作者の努力に拍手を送り、メッセージを受け入れておきたい。

 もう一本はディズニー製作の『魔法にかけられて』。
 こちらはドキュメンタリーの対極にあるような作品である。
 お城の王子様と結婚することになっていた美しい娘が、継母の陰謀によって現代のニューヨークに飛ばされてしまい、そこで真実の愛を見つけ出すというお話。
 おとぎ話の世界から抜け出たキャラクターたちが、実写の世界で活躍するというから、最初はおとぎ話を現代に置き換えただけの物語だと思っていたが、どうしてどうして。何とこれはディズニー映画のセルフ・パロディだったのだ。
 おとぎ話の荒唐無稽なところをそのまま笑ってしまおうというノリがとにかく愉快。アニメの世界から来たキャラクターたちのオーバーアクションは、現代の危ないヒトたちを連想させるし、会話の途中でいきなり歌い出して相手をぎょっとさせるのもミュージカルなら当たり前だが現実世界ではかなり不気味。そしてヒロインが動物たちを呼び集めたら、都会の真ん中ではよくて鳩、その他はドブネズミやゴキブリばかりだったりする。
 よくぞここまで自分たちの世界を茶化せるものだと、逆に心配してしまうほどである。もちろん過去の名作へのリスペクトもしっかりフォローされているので、その辺はさすがに抜かりない。また、ミュージカル・シーンも本家に負けないぐらい素晴らしい。
 他愛ないお話ではあるが、暇つぶしには十分すぎるほどの一作。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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