fc2ブログ
探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ルーファス・キング『不思議の国の悪意』(創元推理文庫)

 『不変の神の事件』に続いて、もういっちょルーファス・キング。〈クイーンの定員〉にも選ばれた『不思議の国の悪意』である。収録作は以下のとおり。

Malice in Wonderland「不思議の国の悪意」
Miami PapersPlease Copy「マイアミプレスの特ダネ」
The Body in the Pool「淵の死体」
To Remember You By「思い出のために」
Let Her Kill Herself「死にたいやつは死なせろ」
Agree-or Die「承認せよーさもなくば、死ね」
The Body in the Rockpit「ロックピットの死体」
The Pills of Lethe「黄泉の川の霊薬」

 不思議の国の悪意

 タイトルからしてひと癖もふた癖もありそうで、もしかすると「奇妙な味」の路線かと予想したのだがあに図らんや。意外にもオチの効いたサスペンス系の作品がほとんどである。なかには謎解きをメインにした本格風味もあるのだが、それらの作品もロジックを楽しむとかいうよりは、あくまで意外性を楽しむのが胆。こじゃれた雰囲気を演出するのが上手く、テンポも軽快なことから、全体の味わいはウールリッチに近いと感じた。
 ただ、オビに書かれているような「潜み棲む悪意」「クイーンのお墨付き」という景気のいい惹句に期待しすぎるのはよくない。確かに事実ではあるのだが、昨今の、刺激の強いスリラーや複雑怪奇な本格に慣れてしまった向きには、やや物足りなく感じることもあろう。誇大広告とまでは言わないけれど、あくまでクラシックとして楽しむのが吉。
 とりあえず個人的には十分楽しめる短編集であり、特に表題作である「不思議の国の悪意」は、設定の妙とサスペンス、謎解きが程良くブレンドされた佳作である。この一作のために買っても損はしないはずだ。

関連記事

Comments

« »

09 2023
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー