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 五十年ぶりぐらいで新訳されたパーシヴァル・ワイルド『検死審問ーインクエストー』を読む。東京創元社の「世界推理小説全集」版は持っていたはずだが、せっかく読みやすい新訳が出るならそっちがいいやと買ったもの。ただ、頭では『検屍裁判』が長らくインプットされていたので、タイトルがどうも馴染めないが、解説によると確かに「検死審問」の方が適切そうなので、これはまあ仕方ないか。

 ちなみに創元では、いま文庫創刊50周年記念ということで、復刊リクエストを受け付けておりますな。昔から名のみ知っているだけで、まだお目にかかったことがないのはこんなところ。ま、だめだとは思うのだが(苦笑)、個人的にはこれだけ出してくれればもう十分である。

 ヘレン・マクロイ『幽霊の2/3』
 クリストファー・ブッシュ『チューダー女王の事件』
 マージェリー・アリンガム『反逆者の財布』
 ヘレン・ユーステス『水平線の男』


 検死審問

 話を戻そう。『検死審問ーインクエストー』である。まずはストーリーから。
 検死官リー・スローカムの初仕事は、村に住む女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起こった殺人事件であった。ーー絶大なる人気を誇る女流作家ミセス・ベネットの七十才を祝う集い。彼女の財産をあてにする親類縁者、出版社の社長、出版代理人、そして彼女の作品を酷評し続けた評論家……ひと癖もふた癖もありそうな関係者が集い、さまざまな欲望がぶつかりあう。そしてついに悲劇は起こった……。

 とまあ、こんな感じで書くとえらく深刻な話に聞こえるかもしれないが、実はかなりユーモラスなミステリである。
 そもそも構成からして面白い。物語はタイトルどおり検死審問が舞台であり、事件は関係者の証言や日記などで語られてゆく。この検死審問に出席する検死官やら陪審員、職員らは、死体の数や審問の日数、記録のページ数などで手当が増えるため、必要以上にだらだらと審問を続けるわけである。加えて検死官スローカムの審問の進行ぶりも、すさまじくいいかげんで適当。だがこれが結果的に関係者の自由な発言を促し、事件の真相が少しずつ明らかになっていく。本格としての仕掛けとユーモアのバランス。この辺の匙加減がまあ見事なのだ。
 例えば最初の証言者、ベン・ウィリットも自分の生い立ちから話を始める始末。読者はまだどんな事件が起こったのかすらわからない状態でこれを読まされ、しかもどちらかというと単なるユーモア小説のようなペースに誘われてしまう。ここで少々油断していると、いきなりその無駄話が重要な証言に変わる瞬間がくるわけで、このタイミングが絶妙である。
 そして何といっても極めつけは最終章でのたたみかけ。本書が本格としても傑作であることを証明するにふさわしい真相であり、実は巧妙に計算された作品であることがわかるのだ。

 名のみ知られただけのクラシックと侮るなかれ。本書は間違いなくオススメの一冊。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





Sphereさん

おお、やはり国書の方でしたか。
ちなみに来月にはもうDVD-BOXが出るらしいので、そちらで確認する手もありますね。
私はパスしますが(^_^;)
【2008/10/16 00:55】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

「33分探偵」、第1話で探偵の事務所に国書の世界探偵小説全集が並んでました。
あのドラマも目の付けどころはいいなぁと感心したんですが、演出があんまりなので見るの止めたんですよね~。惜しい(^^;
【2008/10/15 20:11】 URL | Sphere #-[ 編集]

Sphereさん

おお、「33分探偵」でそんなことが。
あのドラマ、けっこうミステリ好きが絡んでいるようで、セットに国書の探偵小説全集とか並べてあったりしたらしいですね(それともポケミスだったか?)。
『幽霊の2/3』は本当に面白いかどうかは知らないんですが、今じゃ復刊されないことで有名になった感がありますね。たまにヤフオクあたりで出ると値段のすごいことすごいこと。
【2008/10/15 00:36】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

ふーむ。
ヘレン・ユーステスなんて名前すら知りませんでした。
『幽霊の2/3』は、ちょっと前までやっていた「33分探偵」だったかな、堂本くんが探偵に扮した変な深夜ドラマがありまして、私は第1回だけ見てやめたんですが、その後の回でドラマの中でネタバレされていたらしいです。そんなドラマに取り上げられるくらいだから名著なんだろうなぁと、その時知りました(^^;マクロイは好きなので復刊してほしいなぁ。
【2008/10/14 19:56】 URL | Sphere #-[ 編集]















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