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横溝正史『横溝正史探偵小説選I』(論創社ミステリ叢書)
『横溝正史探偵小説選I』を読む。
2006年に横溝正史の未発表原稿が発見されたのは、まだ記憶に新しいところだが、その作品を含めてこれまで単行本未収録だった作品をドカッとまとめたのが本書である。既に「II」も発売されているが(こちらはジュヴナイル中心)、いやあ横溝正史の新刊、しかも未読の作品ばかりをまとめた本が、こうして立て続けに発売されるという事実が凄いやね。マイナー作家ならともかく、なんせ横溝正史。つい先日は角川文庫の超レア本『横溝正史読本』も復刊されたし、まさに真打ち登場という感じか。

■創作・翻案編
「霧の夜の出来事」
「ルパン大盗伝」
「海底水晶宮」
「恐ろしきエイプリル・フール」
「化学教室の怪火」
「卵と結婚」
「十二時前後」
「橋場仙吉の結婚」
「恐ろしき馬券」
「悲しき暗号」
「宝玉的道話集」
「お尻を叩く話」
「首を抜く話」
「博士昇天」
「足の裏 共犯野原達男の告白」
「五つの踊子」
「妻は売れッ子 甘辛夫婦喧嘩抄」
「黄色い手袋」
「五万円の万年筆」
「ドラ吉の新商売」
「コント・むつごと集」
「陽気な夢遊病者」
「堀見先生の推理」
「榧の木の恐怖」
収録作品はこんなところ。これ以外にも評論系もたっぷりと収録されているのだが、ページ数でいえば創作系が7割弱を占めている。
作品自体は初期のものが中心。『鬼火』等のドロドロした作風に到達する前、とにかく機会と必要あらば何でも書いていた時代で、純粋なミステリはそれほど多くはない。こじゃれた外国風のショートショートやコントみたいな作品がほとんどで、ユーモアとペースト、そしてオチの三大構成要素でもっていく。正直、作品そのものの質に大きな期待をしてはいけない。
2006年に発見された作品「霧の夜の出来事」もやはりその手の作品で、ベースはコミカルなスリラーだが、テンポがいいので、よくいえばまるで昔の映画を観ているような雰囲気。
むしろそれ以上に注目したいのは、「ルパン大盗伝」と「海底水晶宮」であろう。ともにルパンもののパスティーシュというか翻案であり、かなりやりすぎの嫌いはあるが、まあ楽しいことは楽しい(笑)。山本周五郎のホームズもの同様、熱烈なルパンのファンが読んだらどう思うかというような爆弾もしっかり(?)落とされていて、話の種には必須である(笑)。
ちなみに本書がラインナップされている論創ミステリ叢書。判型がでかすぎるところが玉に瑕なのだが、解説が非常に充実している点は高ポイント。本書も相当な作品数が収録されているものの、ほぼ全作に渡って解題がある親切仕様である。なかには正史の作品かどうかが不明瞭なものまであるのだが、その根拠や経緯なども紹介したり、至れり尽くせり。
できれば論創海外ミステリの方も、もう少し解説を頑張ってほしいものだ。なぜ同じ版元なのに、あちらはああも淡泊な形にしているのだろう?
2006年に横溝正史の未発表原稿が発見されたのは、まだ記憶に新しいところだが、その作品を含めてこれまで単行本未収録だった作品をドカッとまとめたのが本書である。既に「II」も発売されているが(こちらはジュヴナイル中心)、いやあ横溝正史の新刊、しかも未読の作品ばかりをまとめた本が、こうして立て続けに発売されるという事実が凄いやね。マイナー作家ならともかく、なんせ横溝正史。つい先日は角川文庫の超レア本『横溝正史読本』も復刊されたし、まさに真打ち登場という感じか。

■創作・翻案編
「霧の夜の出来事」
「ルパン大盗伝」
「海底水晶宮」
「恐ろしきエイプリル・フール」
「化学教室の怪火」
「卵と結婚」
「十二時前後」
「橋場仙吉の結婚」
「恐ろしき馬券」
「悲しき暗号」
「宝玉的道話集」
「お尻を叩く話」
「首を抜く話」
「博士昇天」
「足の裏 共犯野原達男の告白」
「五つの踊子」
「妻は売れッ子 甘辛夫婦喧嘩抄」
「黄色い手袋」
「五万円の万年筆」
「ドラ吉の新商売」
「コント・むつごと集」
「陽気な夢遊病者」
「堀見先生の推理」
「榧の木の恐怖」
収録作品はこんなところ。これ以外にも評論系もたっぷりと収録されているのだが、ページ数でいえば創作系が7割弱を占めている。
作品自体は初期のものが中心。『鬼火』等のドロドロした作風に到達する前、とにかく機会と必要あらば何でも書いていた時代で、純粋なミステリはそれほど多くはない。こじゃれた外国風のショートショートやコントみたいな作品がほとんどで、ユーモアとペースト、そしてオチの三大構成要素でもっていく。正直、作品そのものの質に大きな期待をしてはいけない。
2006年に発見された作品「霧の夜の出来事」もやはりその手の作品で、ベースはコミカルなスリラーだが、テンポがいいので、よくいえばまるで昔の映画を観ているような雰囲気。
むしろそれ以上に注目したいのは、「ルパン大盗伝」と「海底水晶宮」であろう。ともにルパンもののパスティーシュというか翻案であり、かなりやりすぎの嫌いはあるが、まあ楽しいことは楽しい(笑)。山本周五郎のホームズもの同様、熱烈なルパンのファンが読んだらどう思うかというような爆弾もしっかり(?)落とされていて、話の種には必須である(笑)。
ちなみに本書がラインナップされている論創ミステリ叢書。判型がでかすぎるところが玉に瑕なのだが、解説が非常に充実している点は高ポイント。本書も相当な作品数が収録されているものの、ほぼ全作に渡って解題がある親切仕様である。なかには正史の作品かどうかが不明瞭なものまであるのだが、その根拠や経緯なども紹介したり、至れり尽くせり。
できれば論創海外ミステリの方も、もう少し解説を頑張ってほしいものだ。なぜ同じ版元なのに、あちらはああも淡泊な形にしているのだろう?
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Comments
Edit
私も購入致しました!正史と聞くと黙っておれない(笑)めとろんです。
『霧の夜の出来事』はなかなか面白かったですね。まさに『恐るべき四月馬鹿』の頃の正史、という感じで楽しい小品でした。sugata様の仰るように、戦前のコメディ映画を観ているような感覚がありましたね。『新青年』編集長の本領発揮!いかにも"モボ"な洒落た内容でした。
しかし、論創社の本は、総じて持ち歩きにくいのが玉に瑕ですね(笑)まさに弁当箱(笑)私のように、通勤時の電車内で本を読む人間にとっては大変不便です。カバーも傷みやすいし…悩みどころです。
Posted at 23:39 on 10 18, 2008 by めとろん
めとろんさん
いらっしゃいませ。『新青年』は正史が編集長になってから、ますますモダンな方向性になっていったといいますが、これは正史の戦略もあるでしょうけれど、自分の単なる好みを反映させた部分も大きいでしょうね。
判型は今もって謎ですね(笑)。何故にこの形・大きさなのかは、担当者に聞いてみないとわかりません。私も通勤電車で苦労している一人ですが、そもそも電車で読みたくないので、つい読むのが後回しになっちゃうんですよねぇ。
Posted at 14:16 on 10 19, 2008 by sugata