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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


エドワード・D・ホック『サム・ホーソーンの事件簿V』(創元推理文庫)

 エドワード・D・ホックの『サム・ホーソーンの事件簿V』を読む。
 舞台はアメリカの田舎町ノースモント。平和なはずのこの地で、なぜか不可能犯罪に遭遇してばかりいる開業医サム・ホーソーンの活躍を描く短編集。恒例となっているボーナストラックは「レオポルド警部の密室」である。

The Problem of the Missing Roadhouse「消えたロードハウスの謎」
The Problem of the Country Mailbox「田舎道に立つ郵便受けの謎」
The Problem of the Crowded Cemetery「混み合った墓地の謎」
The Problem of the Enormous Owl「巨大ミミズクの謎」
The Problem of the Miraculous Jar「奇蹟を起こす水瓶の謎」
The Problem of the Enchanted Terrace「幽霊が出るテラスの謎」
The Problem of the Unfound Door「知られざる扉の謎」
The Second Problem of the Covered Bridge「有蓋橋の第二の謎」
The Problem of the Scarecrow Congress「案山子会議の謎」
The Problem of Annabel's Ark「動物病院の謎」
The Problem of the Potting Shed「園芸道具置場の謎」
The Problem of the Yellow Wallpaper「黄色い壁紙の謎」
The Leopold Locked Room「レオポルド警部の密室」

 本書の特徴は、作中でいよいよ第二次世界大戦の影が濃くなってきていることか。既に火の手が上がるヨーロッパとは異なり、遠く離れたアメリカはまだ参戦する前のこと。しかもこんな田舎町ではのんびりムードもまだいくらか漂っている。それでも戦争が引き金となって事件が発生したり、あるいはノースモントの住人たちの人生が転機を迎えたり、いつになく時の流れを感じさせる描写が目立つ。

 サム・ホーソーンの事件簿V

 出来そのものはいつもどおり。アベレージが高く、安心して読める仕上がりである。本書は傑作集などではなく、すべて本国での発表順に収録している(ちなみに本書は四十九~六十作目)。したがって、なかなか粒揃いとはいかないはずなのだが、こうしてコンスタントに不可能犯罪テーマの作品を書けることは驚異的といえる。
 ベストはやはり「レオポルド警部の密室」か。ボーナストラックは傑作を選んで入れているだけに、どうしてもサム・ホーソーン・シリーズは分が悪いのだが、それでも「消えたロードハウスの謎」「田舎道に立つ郵便受けの謎」「園芸道具置場の謎」「黄色い壁紙の謎」などはまずまず読ませる。
 ややもするとトリックのパターンが似ている作品も見受けられるのが残念だが、『V』ともなれば、さすがの名手ホックも不可能犯罪の量産は厳しかったようだ。

 小説としての物足りなさが残るのもいつもどおりである。死体を前にした人々の反応の悪さが特に気にかかるところで、せいぜいがステロタイプ止まり。とりまく状況の不思議さに目を奪われているとはいえ、この紙芝居臭は何とかならないものか。
 ただ、同じホックの作品でも、他のシリーズではそれほど紙芝居臭は気にならない。そこでつらつら考えてみたのだが、もしかするとホックは敢えてそういう描写にしていたのではないかと、最近は思うようになってきた。登場人物の言動はあえて形式的にとどめ、数々の事件を繰り返し寓話的に語ることで、アメリカの田舎町の在り様、人間性をあぶり出したいのかなと。考え過ぎか(笑)。

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Comments

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ポール・ブリッツさん

いや、私も軽い短編だって普通に好きなんですけど(笑)。ただ、かなり個人的な見方になりますが、サム・ホーソーンものの"語り"はホックのシリーズ中でも一番ピンとこないんですよね。

『サイモン・アークの事件簿』はもちろん買ってありますが、まだ積んだままです。以前に雑誌で読んだ印象では、オカルト風味と不可能趣味がいい案配だったように記憶しています。そろそろ読んでみようかな。
あ、ニックも十分楽しめますよ。ただ、まとめて読むと少し飽きるかも。

Posted at 23:10 on 05 16, 2009  by sugata

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ホックの「サム・ホーソーン」シリーズは大好きです。よくもまあ不可能犯罪ネタがここまで次から次へとわいてくるもんですな。
重い話も嫌いではないですが、むしろ短編ミステリというのは、こういう軽めの話のほうが向いているのではと思います。ホックが「シャーロック・ホームズ」の時代に生きて短編ミステリを量産していたら、確実にひと財産作っていたのではないでしょうか(笑)。
とにかく、楽しいミステリが読みたくなったら、わたしはこのシリーズを読みますね。
はっ! これって、内田康夫のノベルズを読む読者と同じ思考パターン!? ががーん(笑)。
第6集早く出ないかな。

ところで、「サイモン・アークの事件簿1」は読まれましたか? あれも好きですねえ。
でもなぜかニックはまともに読む機会にめぐりあっていないのでした。なぜだろう?

Posted at 22:05 on 05 16, 2009  by ポール・ブリッツ

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涼さん

全面的に激賞しているつもりはないので、ちょっと恐縮です。とはいえ私もなんだかんだと全部読んでおりますし、それに見合うだけの楽しみは与えてくれるのが、ホックの力ではないかと。
もしお気に召したら、ノン・シリーズの『夜はわが友』もお試し下さい。

Posted at 01:42 on 11 05, 2008  by sugata

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こんばんは。

先日から気になっていたのですが、とうとうシリーズの最初の一冊を、注文してしまいました。
楽しみです (^_^)

Posted at 19:49 on 11 04, 2008  by

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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