- Date: Mon 03 11 2008
- Category: 評論・エッセイ 早川書房編集部
- Community: テーマ "評論集" ジャンル "本・雑誌"
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早川書房編集部/編『ロバート・B・パーカー読本』(早川書房)
結局、昼休みに慌ただしくまわるぐらいで、ゆっくり見物することもなく、今年の神田古本まつりも終了。この連休に行けないこともなかったが、富士五湖まで紅葉まつりを見物にいってしまった。まったく逆方向だよ。
スペンサー・シリーズなどで有名なハードボイルド作家、ロバート・B・パーカーのガイドブックが先頃刊行された。その名も『ロバート・B・パーカー読本』。
昔からガイドブックの類が好きで、もちろんミステリも例外ではない。さすがにいい歳なので、今さら入門書で得るものはあまりないのだが、気になるのは、どういう切り口で構成をまとめているかである。ま、これは趣味というより職業柄か(ミステリとは全然関係ないジャンルですが)。したがって全般的なガイドブックは面白そうなら買う、といったスタンス。
ただし同じガイドブックでも、作家別のものになると、よほどメジャーな作家でないかぎり本など出ないので、こういう場合は中身に関係なく即購入。入門書から評論まで、ターゲットも本によってさまざまなのだが、さて『ロバート・B・パーカー読本』はどうか。

内容はというと、パーカーの書いた唯一の短篇といってよい「代理人」が目玉。これに全著作のブックガイド、シリーズ別のエッセイ、登場人物の事典、『スペンサーの料理』の続編、映像化作品の資料などが加わって、一応ひととおりのところは網羅しているようだ。
残念ながら特に面白い趣向はないが、映像化作品をまとめたものは参考になるし、先に書いたように短篇「代理人」の単行本初収録は意味があろう。ただ、年表や著作リストなど利便性の高い資料は入れておいた方がよかっただろう。
一番期待はずれだったのはブックガイドの淡泊さ、コラム・エッセイの物足りなさ。全般に無難なものばかりで、もう少し思い切ったツッコミがあってもいいのではないか。作品評価、ミステリにおける位置づけなど、ロバート・B・パーカーあたりになるとほぼ評価は固まっているわけで、今さらそれを繰り返されても面白くはない。手練れの評論家も寄稿しているのだから、そこはもう少し工夫がほしい。わずかに池上冬樹氏がスペンサー・シリーズの構成要素の洗い出しをやっていて、それ自体は悪くないが、そこからどうするというところで結論をさらっと流している。好きな評論家だけに物足りない思いだけが残り、ちょっと残念だった。
こういう入門的なガイドブックというのは、アプローチの方法はいくらでもある。したがって編集時のコンセプトというか立ち位置を明確にするところから作業が始まるわけで、ここがあやふやだと何とも締まりのないものが出来上がってしまう。本書がそうだとは言わないが、本の造りを見れば、もう少し本格的なものを期待するのは当然。巻末では「『新・ロバート・B・パーカー読本』でお会いしましょう」と締められているが、それは編集部の頑張り次第だな(笑)。
スペンサー・シリーズなどで有名なハードボイルド作家、ロバート・B・パーカーのガイドブックが先頃刊行された。その名も『ロバート・B・パーカー読本』。
昔からガイドブックの類が好きで、もちろんミステリも例外ではない。さすがにいい歳なので、今さら入門書で得るものはあまりないのだが、気になるのは、どういう切り口で構成をまとめているかである。ま、これは趣味というより職業柄か(ミステリとは全然関係ないジャンルですが)。したがって全般的なガイドブックは面白そうなら買う、といったスタンス。
ただし同じガイドブックでも、作家別のものになると、よほどメジャーな作家でないかぎり本など出ないので、こういう場合は中身に関係なく即購入。入門書から評論まで、ターゲットも本によってさまざまなのだが、さて『ロバート・B・パーカー読本』はどうか。

内容はというと、パーカーの書いた唯一の短篇といってよい「代理人」が目玉。これに全著作のブックガイド、シリーズ別のエッセイ、登場人物の事典、『スペンサーの料理』の続編、映像化作品の資料などが加わって、一応ひととおりのところは網羅しているようだ。
残念ながら特に面白い趣向はないが、映像化作品をまとめたものは参考になるし、先に書いたように短篇「代理人」の単行本初収録は意味があろう。ただ、年表や著作リストなど利便性の高い資料は入れておいた方がよかっただろう。
一番期待はずれだったのはブックガイドの淡泊さ、コラム・エッセイの物足りなさ。全般に無難なものばかりで、もう少し思い切ったツッコミがあってもいいのではないか。作品評価、ミステリにおける位置づけなど、ロバート・B・パーカーあたりになるとほぼ評価は固まっているわけで、今さらそれを繰り返されても面白くはない。手練れの評論家も寄稿しているのだから、そこはもう少し工夫がほしい。わずかに池上冬樹氏がスペンサー・シリーズの構成要素の洗い出しをやっていて、それ自体は悪くないが、そこからどうするというところで結論をさらっと流している。好きな評論家だけに物足りない思いだけが残り、ちょっと残念だった。
こういう入門的なガイドブックというのは、アプローチの方法はいくらでもある。したがって編集時のコンセプトというか立ち位置を明確にするところから作業が始まるわけで、ここがあやふやだと何とも締まりのないものが出来上がってしまう。本書がそうだとは言わないが、本の造りを見れば、もう少し本格的なものを期待するのは当然。巻末では「『新・ロバート・B・パーカー読本』でお会いしましょう」と締められているが、それは編集部の頑張り次第だな(笑)。
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ミステリマガジンの1989年9月号にも掲載されておりますが、単行本では初収録とのことです。
スペンサーの元恋人・ブレンダが登場するということで、シリーズのファンなら見逃せませんが、テイストはいつもどおりのスペンサー印(笑)。短篇ゆえにいつもより濃い味つけとなっている気もいたします。