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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

R・D・ウィングフィールド『フロスト気質(上)』(創元推理文庫)

 R・D・ウィングフィールドの『フロスト気質』を上巻まで読み終える。
 今さら説明の要もあるまいと思うのだが、不幸にしてこのシリーズを読んだことがないという人のために、一応書いておく。
 主人公にして探偵役は、下品で粗野なフロスト警部。その言動で周囲の顰蹙を買いながらも、お得意のひらめきで場当たり的な捜査を進め、数々の事件を解決するというユーモア満載の警察小説である。いわゆるモジュラー型の結構を備え、所轄のデントン警察署に持ち込まれる複数の事件を同時進行で描いていくのも大きな特徴。
 年末を賑わす数々のベスト10企画でも常にトップグループに食い込んでくる人気シリーズだが、残念なことに著者のウィングフィールドは昨年他界。本作を含めると残された作品はあと三作ということで、楽しみながらも心して読みたい一作である。

 フロスト気質(上)

 とりあえず上巻まで読んだところでは上々な仕上がりで、キャラクターの立ち方や混沌としたストーリー展開は相変わらず絶妙である。本来であれば感情移入しにくい主人公、しかも決して読みやすくはない構成、加えて今回の事件の陰惨さを考えれば、とてもここまで魅了されることはないはずなのに、それでもかつグイグイと読者を引き込む力があるのは流石としか言いようがない。
 詳しくは下巻読了時に書くけれど、おそらく本書も傑作の予感。ああ、仕事さえ忙しくなければもっと早く読めるのに。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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