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 あれほどしつこかった梅雨がいきなり明け、ようやく夏に突入した模様。暑いのは苦手だが、湿度が低くなるのはありがたい。少しは読書もはかどるか?

 読了本はポール・ギャリコの『恐怖の審問』。
 無鉄砲だが、野心に燃え、正義感にあふれた凄腕のアメリカ人新聞記者。彼は「鉄のカーテン」の向こうに潜入を果たすべく、ウィーンへ渡る。目的は無実の人間に罪を自白させるという、恐るべき共産主義国家の法廷の内幕を暴くことだ。潜入はうまくいったかに見えたが……。
 ジャンルとしてはスパイ小説といえるのか。形としては共産主義国家の恐ろしさ、洗脳の恐怖というものが前面に出ており、エンターテインメントとしてはまず申し分のないところだろう。だが、そこはギャリコ。単なる娯楽物語に終わらせず、強烈なヒューマニズムを打ち出すことによって、ストーリーとは異なる次元で読者に宿題を課している感じだ。このほろ苦い結末にしばし息がつまる思いである。
 なお、本作と同じ年に『雪のひとひら』も発表されている。一見するとまったくテイストの異なる両作品だが、根底に流れる本質は、案外同じところにある。『雪のひとひら』系統のギャリコしか読んだことのない人には、ぜひとも本作をお勧めする次第。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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