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アーサー・ポージス『八一三号車室にて』(論創海外ミステリ)
少し古いニュースになるが、昨年末に作家のドナルド・E・ウェストレイク、ヒラリー・ウォーの両氏が亡くなった。ウォーは12月8日、ウェストレイクは12月31日とのこと。両者とも大ホームランをかっ飛ばすようなタイプではなかったけれども、渋く安打を量産し、本格好きからハードボイルドや冒険小説のファンに至るまで幅広いミステリファンから支持されていたように思う。まさに職人と呼ぶにふさわしい作家だった。合掌。

アーサー・ポージスの『八一三号車室にて』を読む。
ポージスは主に(本国の)『エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン』や『ヒッチコック・マガジン』を舞台に活躍した、短篇専門の作家である。本書は日本で初めて出版される作品集で、まずはその意義を称えたい。
内容はというと大きく二部構成。第一部は<ミステリ編>と題し、オチを利かせたクライムストーリーがメイン。第二部は<パズラー編>というタイトルどおり本格がメインである。各十三編ずつの計二十六作を収録している。
で、感想だが、<ミステリ編>にしても<パズラー編>にしても、オチやトリックはなかなか鮮やか。これだけの作品を収録しながらほぼ全作にトリッキーな趣向を凝らしているというのは、ある意味驚異的ですらある。ネット上での評判をのぞいてみても概ね好意的なものが多い。
ただ、野暮を承知で書くと、作品のひとつひとつが短すぎてどうにも物足りない。もう余計なことはほとんど描写しないのである。先にも書いたようにネタ(オチやトリック)はいいのだが、とにかくそれを見せることだけが目的のようにも感じられ、そこに至る物語・演出が弱い。その結果として<ミステリ編>の各作品はまるでショートコント、<パズラー編>は推理クイズのような印象しか残らない。作品集が出たのは嬉しいけれど、こうしてまとめて読むと、逆に弱点が目立ってしまうのは皮肉なものである。
パズラーが好きなら読んでおいて損はないレベルだとは思うが、それだけに惜しい。

アーサー・ポージスの『八一三号車室にて』を読む。
ポージスは主に(本国の)『エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン』や『ヒッチコック・マガジン』を舞台に活躍した、短篇専門の作家である。本書は日本で初めて出版される作品集で、まずはその意義を称えたい。
内容はというと大きく二部構成。第一部は<ミステリ編>と題し、オチを利かせたクライムストーリーがメイン。第二部は<パズラー編>というタイトルどおり本格がメインである。各十三編ずつの計二十六作を収録している。
で、感想だが、<ミステリ編>にしても<パズラー編>にしても、オチやトリックはなかなか鮮やか。これだけの作品を収録しながらほぼ全作にトリッキーな趣向を凝らしているというのは、ある意味驚異的ですらある。ネット上での評判をのぞいてみても概ね好意的なものが多い。
ただ、野暮を承知で書くと、作品のひとつひとつが短すぎてどうにも物足りない。もう余計なことはほとんど描写しないのである。先にも書いたようにネタ(オチやトリック)はいいのだが、とにかくそれを見せることだけが目的のようにも感じられ、そこに至る物語・演出が弱い。その結果として<ミステリ編>の各作品はまるでショートコント、<パズラー編>は推理クイズのような印象しか残らない。作品集が出たのは嬉しいけれど、こうしてまとめて読むと、逆に弱点が目立ってしまうのは皮肉なものである。
パズラーが好きなら読んでおいて損はないレベルだとは思うが、それだけに惜しい。