ADMIN TITLE LIST
 生誕百年記念で文庫化された『松本清張短編全集01西郷札』を読んでみた。
 正直、これまで松本清張のいい読者であったことはなく、読んだことがあるのは『点と線』や『ゼロの焦点』を始めとする初期の代表的長編や短編ををいくつかといった程度。それもほとんど中学生の頃に読んだだけなのだから、一応ミステリのブログなどをやっている身としては、誠に恥ずかしい限りである。
 ただ、当時はそれなりに面白がって読んでいた記憶はある。
 特に初めて読んだ長編『点と線』のアリバイ・トリックは、当時はまっていたクイーンや横溝正史に比べると、まったく異なる傾向のトリックだから、それだけで満足したものだ。ただ、他の長編を読み進むうち、あまりに地味な作風(あくまでクイーンや横溝正史に比べてだが)にだんだん退屈してきたということはあるだろう。
 まあ、年をとって、今では社会派云々などという偏見もなく、ここ数年は逆に清張も一度はきっちり読んでおきたいと思っていたところへ、短編全集の文庫化である。渡りに舟とばかりに読み始めた次第。

 松本清張短篇全集01西郷札

 この『松本清張短編全集』はもともとカッパ・ノベルスで1963年に刊行された自選短編集である。本書はその第一巻にあたり、清張がまだミステリに手を染める前、主に歴史物を書いていた最初期の作品を収録している。

「西郷札」
「くるま宿」
「或る「小倉日記」伝」
「火の記憶」
「啾々吟」
「戦国権謀」
「白梅の香」
「情死傍観」

 いやあ、これは予想以上にいい。史実から興味深いエピソードを上手く拾い上げ、そこから話を脚色して膨らませるというのは歴史作家の常套手段だとは思うが、清張はその逆をいっているような気がする。
 キレで見せるのでなければ、コクで見せるわけでもない。語るべきところはそのまま語り、あえて強烈な演出を施さない。物語としてはやや盛り上がりに欠けるようにも思えるが、そのくせ読み終えたあとの余韻は相当なものだ。それは往々にして人生の儚さであったり虚しさであったりするのだが、それだけに人の業というものを強く感じずにはいられない。食わず嫌いの方、ぜひ。

 なお、本シリーズは六年ほど前に一度、新書で復刻されているのだが、今回の文庫化にあたっては本当の短編全集にしても良かったかなという気はする。


テーマ:歴史・時代小説 - ジャンル:本・雑誌





カフェレーチェさん

そうですね、底辺の人間が上目指して這い上がっていく、みたいなストーリーが多いせいか、共感も出来るし入り込みやすいですよね。
ちなみに松本清張の映像作品は小説に負けないぐらい量が多くて、これまたついていくのが大変なのですが、ご本人が満足していた映像作品は意外に少なかったらしく、『砂の器』など数作ぐらいだという話をどこかで読んだ記憶があります。ううむ、厳しい。
【2009/06/14 00:07】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

こんばんは

「西郷札」、テレビで観たことあります!
サスペンスだったかなぁ・・・?!
私の中では、“ 義兄妹の悲恋 ” という印象が強く残っています。
他にも 「 紐 」 という作品も観ました。
奥さんを怖いくらい愛しているご主人が、
奥さんを罠にかけ、自分が死んでもなお縛り付けておく
という内容でした、確か。
こちらは、恐怖心から覚えていました ( 笑 )
ごく最近の作品でいうと、「 黒皮の手帖 」 ですね♪

松本清張さんの作品は、人間の本性が露見している作品が多いので、
どれも納得のいくストーリで好きです☆
それに出身地が同じ、福岡県というのが嬉しいです (*^▽^*)
【2009/06/13 21:23】 URL | カフェレーチェ #-[ 編集]















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2017 探偵小説三昧, All rights reserved.
ネット小説