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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

エリザベス・フェラーズ『ひよこはなぜ道を渡る』(創元推理文庫)

 エリザベス・フェラーズの『ひよこはなぜ道を渡る』を読む。
 友人のジョンの屋敷を訪れたトビーは、自分の目を疑った。書斎に倒れているのはまぎれもないジョンの姿。部屋は荒れ果て、弾痕や血痕までが残されている。だが、驚いたことにジョンの死因は自然死だった。では弾痕や血痕は果たして何を意味しているのか。“死体なしの殺人”と“殺人なしの死体”で幕を開けるトビー&ジョージ最後の事件。

 ひよこはなぜ道を渡る

 E・X・フェラーズなどと呼ばれていたときはけっこう渋い英国ミステリの印象だったが、創元でトビー&ジョージ・シリーズが紹介されるや、あっという間にユーモア本格ミステリの第一人者として認められた感のあるエリザベス・フェラーズ。実際はかなり古い物語なのだが、現代的にアレンジした翻訳、キャラクター設定も功を奏した感じで、見事に女性ファンを掴んだようだ。これは訳者の勝利か、はたまた版元の勝利か(笑)。

 ただ、キャラで読ませる部分も大きいが、それ以上に本格としてのエッセンスを備えているところがフェラーズの魅力である。本作でも“死体なしの殺人”と“殺人なしの死体”というひねくれた導入、次々と墓穴を掘りまくる登場人物など、ひと癖もふた癖もある設定で読者を引っ張っていく。真相もそれに応えるだけの驚きはあるし、タイトルの「ひよこはなぜ道を渡る」から一気に解決までもっていくジョージ君の推理も見事。
 そんなわけで基本的にはオススメの一作。
 ただし、ただしである。個人的にはどうしても本シリーズのユーモアが馴染めない(爆)。以前に『その死者の名は』の感想でも書いたのだが、笑いのセンスが合わないのである。登場人物たちが終始はしゃぎすぎているから逆にギャグが生きないというか、物語の起伏がぼやけるというか。ま、いろいろ理由も考えつくのだが、結局これは生理的なものに尽きるのだろうなぁ。ファンの人、ごめん。

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Comments
 
ポール・ブリッツさん

これがシリーズ最後の作品だそうですから、ゲットした暁にはごゆっくりお楽しみください。
 
お返事ありがとうございます。

うぬぬぬそれはますます不覚。
新刊の棚をあさってもないわけであります。
ネット通販は嫌いなのでさっそく本屋に注文せねば……。
 
ポール・ブリッツさん

はじめまして。
いや、実は三年前ぐらいの本なんで、こちらも恐縮してしまいます(^_^;)
なかなかタイムリーに紹介できないのが、このブログの情けないところですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 はじめまして
はじめまして。

わっ! いつ出たんですかこの本! トビー&ジョージは大好きなシリーズで、「猿来たりなば」から全巻揃えようと思っていたのですが。しまった……チェックを怠っていたらしいです。早く本屋に行かなくてはうぬぬぬ。

最近は創元では、ホックのサイモン・アークと、米澤穂信の「秋季限定栗きんとん事件」にばかり目が行ってました。不覚……。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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