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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


マイケル・ギルバート『ケイティ殺人事件』(集英社)

 六年前に創元推理文庫から出た『捕虜収容所の死』で、一躍知名度&評価の高まったマイケル・ギルバート。その後も文庫化があったり新刊が出たりしているが、実は絶版になっている中にもいい作品が残っている。それを思い知らされたのが、本日の読了本『ケイティ殺人事件』だ。

 ケイティ殺人事件

 ハニントンはどこにでもあるようなイングランドの田舎町。だが他の町とひとつ違うのは、地元出身の人気美人タレント”ケイティ”が住んでいることだった。テレビで人気が出た今もなお、彼女は町から離れることをせず、ロンドンとハニントンの両方を生活の基盤にしているのだ。
 ところがそのケイティが、ある日、町のダンス・パーティーの帰り道で殺されてしまう。スコットランドヤードから派遣されたノット警視、地元のマッコート刑事らの捜査が始まり、まもなく捜査線上に浮かび上がったのは、ケイティと交際していた地元の新聞記者、ジョナサン。事件は簡単に解決するかと思われたが……。

 おお、いいではないですか。邦題とカバー絵がいまいちなのは仕方ないとして(笑)、中身の方は十分傑作といっていい。
 一応スタイルはクリスティ風とでもいおうか、田舎町を舞台にした典型的な英国風フーダニット。最初の三十ページほどは登場人物があまりに続々と出てくるので少々大変だが、そこさえ乗り切ればOK。
 お話はあくまで地味ながら、登場人物や捜査の過程がしっかり描かれており、まったく飽きることがない。とりわけ捜査によって少しずつ明らかになる事実。この出し入れが実に巧いのである。例えば皆から愛されていたと思われたケイティの本性、あるいは犯罪や事件とは無縁に見えた町の人たちの暗い秘密。やがて逮捕されるのは、動機も機会もありそうなジョナサンだが、同時に弁護団の調査の様子も描かれ、真実は法廷での対決へと持ち越される。
 ありがちな展開とはいえ、サービス精神は満点。
 しかし、しかしである。
 本書が凄いのは、実はそこではない。

(未読の方はご注意! 以下ネタばれとまでいきませんが、かなり核心に近い話となりますので反転で)
 本書が凄いのは、こういう典型的な英国風フーダニットそのものが壮大な仕掛けであり、実は最後四ページに強烈な爆弾を仕掛けていることなのだ。
 実は、ミステリを読み慣れている人なら、本書にはひとつだけ気になる点が出てくるはずだ。ただ、さすがにその時点で真相に気づく人は決して多くないだろう。しかし種明かしを読んだとき、はじめてその気になる点がクリアとなり「そういうことか」となる。

 とにかく久々に騙される快感を味わった。これが絶版とはもったいなさすぎである。
 最近は小泉喜美子や陳舜臣など、ミステリの復刊に色気を出している集英社が版元なので、これもぜひ文庫等で復刊してもらいたいものだ。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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