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 『文豪ミステリ傑作選 三島由紀夫集』を読む。もちろんタイトルを鵜呑みにするのは間違いで、しばらく前に読んだ『文豪ミステリ傑作選 太宰治集』と同じように、あくまで三島由紀夫が犯罪や死を題材にして書いた作品を集めたもの、という認識でよいだろう。

 文豪ミステリ傑作選三島由紀夫集

 基本的にはどの作品も、三島由紀夫の死生観というものが、ここかしこに感じられる。ある意味、美学と言ってもよい。もちろん三島は純粋にミステリを書こうなどとは思っているはずもなく、当然ミステリ的な謎も乏しい。主人公がなぜ犯罪を犯したのか、あるいはなぜ死に至ったのか、さまざまな仮定を生み出し、三島はその行きつく先を確かめようとする。それはミステリにおける、謎を解き明かそうとする行為に近いといえないこともないのだけれど、やはり根本的なところで違う。そもそも本書に収められた作品のほとんどが、犯行が起こったとき、あるいは死が生まれたときに、物語は終わりを告げるのである。

「サーカス」
「毒薬の社会的効用について」
「果実」
「美神」
「花火」
「博覧会」
「復讐」
「水音」
「月澹荘綺譚」
「孔雀」
「朝の純愛」
「中世における一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜粋」

 以上が収録作だが、「サーカス」「花火」「復讐」あたりは比較的読みやすく、広義のミステリやホラーとしても楽しめる。ただ、個人的には「果実」「月澹荘綺譚」といった、美しく背徳的なイメージをもつ作品の方が、より三島らしくて好みである。
 ときには謎を謎のまま放り出したリドル・ストーリー的なものや、虚構が膨らみすぎて現実なのか意識の流れなのか曖昧な作品もあるけれど、基本的には読みやすいものが採られている。とっつきはいいので、たまには文学的ミステリ(どっちかというと幻想小説に近いんだけどね)でも読んでみたい、という人にはおすすめしておきたい。
 なお、残念ながら本書は絶版なれど、ちくま文庫『文豪怪談傑作選 三島由紀夫集 雛の宿』でも「花火」「博覧会」「月澹荘綺譚」「孔雀」は読めるようなので、そちらでも十分かも。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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