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リチャード・ニーリイ『亡き妻へのレクイエム』(ハヤカワミステリ)
リチャード・ニーリイを読んでみる。計算されたプロットに大どんでん返し、ときどきサイコ。ニーリイ作品の特徴といえば、だいたいこの辺りだろう。意外な真相、という点では正にミステリのど真ん中を行くのだろうが、根っこのところでは論理で押すタイプではないので、本格原理主義の方々からはやや異端視されるかもしれない。とはいえ、やはりこのケレンは魅力的だ。ミステリの魅力を人に伝えるには、オススメしやすい作家なのかとも思う。
本日の読了本『亡き妻へのレクイエム』は、そんなニーリイの第三作に当たる。
デビュー作『愛する者に死を』から、すでに大向こうを唸らせることばかりを考えていた節があるので、三作目の本作も、もちろん一筋縄ではいかない……と思っていたのだが。
広告代理店の副社長ポールは、かつて妻を自殺で失っていた。それは二十年以上も前のこと、ポールが従軍中に起こった出来事だった。すでに過去のものとして、思い出は封印していたはず。その彼の記憶を呼び戻したものは、当時の荷物をまとめたひとつのトランクだった。
中から出てきたものは、妻が発送しなかった一通の手紙。間もなく帰国するはずのポールを待ちわびる手紙であった。だが、その手紙に書かれた日付に、彼は愕然とした。それは彼女が自殺した当日のものだったのだ。自殺しようとする人間がこのような手紙を書くだろうか? 真相を探るべくポールは調査に乗り出すが……。

巧いは巧い。基本的にはポールがある人物に容疑をかけて一歩ずつ追いつめていく流れなのだが、それがニーリイの仕掛けた囮であることは、たいていのミステリファンなら容易に想像できるところだ。ニーリイはその予想のさらに裏をかくことで、読者の喝采を浴びる。どんでん返しなんてものは、そもそも鮮やかに一発で決めるべきもので、やりすぎては興ざめだし、二重三重のどんでん返しをやるからには、それなりの説得力がほしいわけである。ニーリイはこの匙加減が巧い。
ただ、本作に関しては、終盤までのストーリーラインや登場人物の造型や設定が単調というか、そのために一発目のどんでん返しに不満が残る。というか、どんでん返しになっていないかな、これは。なまじ二発目のキレが悪くないだけに、ちともったいない。
そんなわけでニーリイらしい捻りは一応、炸裂するものの、やや不満が残る一冊。だが当時の広告業界の描写などは面白いし、気軽な読み物としては十分に合格点だろう。期待しすぎずに読めば吉。
本日の読了本『亡き妻へのレクイエム』は、そんなニーリイの第三作に当たる。
デビュー作『愛する者に死を』から、すでに大向こうを唸らせることばかりを考えていた節があるので、三作目の本作も、もちろん一筋縄ではいかない……と思っていたのだが。
広告代理店の副社長ポールは、かつて妻を自殺で失っていた。それは二十年以上も前のこと、ポールが従軍中に起こった出来事だった。すでに過去のものとして、思い出は封印していたはず。その彼の記憶を呼び戻したものは、当時の荷物をまとめたひとつのトランクだった。
中から出てきたものは、妻が発送しなかった一通の手紙。間もなく帰国するはずのポールを待ちわびる手紙であった。だが、その手紙に書かれた日付に、彼は愕然とした。それは彼女が自殺した当日のものだったのだ。自殺しようとする人間がこのような手紙を書くだろうか? 真相を探るべくポールは調査に乗り出すが……。

巧いは巧い。基本的にはポールがある人物に容疑をかけて一歩ずつ追いつめていく流れなのだが、それがニーリイの仕掛けた囮であることは、たいていのミステリファンなら容易に想像できるところだ。ニーリイはその予想のさらに裏をかくことで、読者の喝采を浴びる。どんでん返しなんてものは、そもそも鮮やかに一発で決めるべきもので、やりすぎては興ざめだし、二重三重のどんでん返しをやるからには、それなりの説得力がほしいわけである。ニーリイはこの匙加減が巧い。
ただ、本作に関しては、終盤までのストーリーラインや登場人物の造型や設定が単調というか、そのために一発目のどんでん返しに不満が残る。というか、どんでん返しになっていないかな、これは。なまじ二発目のキレが悪くないだけに、ちともったいない。
そんなわけでニーリイらしい捻りは一応、炸裂するものの、やや不満が残る一冊。だが当時の広告業界の描写などは面白いし、気軽な読み物としては十分に合格点だろう。期待しすぎずに読めば吉。
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