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 いよいよ21日から裁判員制度がスタートしたわけだが、ミステリファンとしてはやはり一度ぐらいは体験しておきたいという気持ちがチラホラ。不謹慎な動機ではあるが、でも、かなりの人が拒否反応を示している中、嫌々やるよりはよっぽどいいでしょ。

 そんな流れで読んでみたのが、「法廷ミステリー傑作選」と副題のついたアンソロジー『処刑者消失』。刊行はちょいと古くて1976年、編者はなんと日影丈吉。ただし、解説を読むかぎりでは、出版社が集めてくれたものからセレクトしたようで、あまり積極的な関わり方ではなさそう(苦笑)。

 処刑者消失

結城昌治「通り魔」
高木彬光「灰の軌跡」
和久峻三「手の白い悪魔」
佐賀潜「誘拐事件調書」
金川太郎「次席検事」
葛山二郎「赤いペンキを買った女」
日影丈吉「男の城」

 収録作は以上。割とメジャーどころの作家が収録されているが、正直、全体のレベルの方はまあまあといったところ。残念ながら本書でなければ、といった売りは乏しい。というか、そもそも「法廷ミステリー傑作選」と謳っているくせに、法廷ミステリーがほとんどないというのはまずいだろ(笑)。検事や弁護士を主人公にすれば法廷もの、ってわけではないんだから。
 そんな中で、葛山二郎の「赤いペンキを買った女」は、ほぼ法廷場面だけで物語が進むという絵に描いたような法廷もの。しかもかつて日本で陪審員制度があった時代の話だからなかなか貴重である。いろいろなアンソロジーで読める作品なので、今さらここでプッシュすることもないのだが、やはり巧い作品。ただ最後の最後になって、法廷以外のところで決着をつけるのが惜しい(笑)。
 他で気になるのは金川太郎。ミステリ畑ではないので、まったく知らなかった作家なのだが、同人誌を主宰していたり直木賞候補にもなるなど、相応の力を持っていた人らしい。「次席検事」は事件の核心に迫っていく次席検事の仕事ぶりを、家族や同僚とのやりとりを織り交ぜつつ描く。ミステリとしてはいまいちだが、検事の生活を描いた普通小説として読む分にはなかなか楽しめた。これ、シリーズになっているのだろうか。

 蛇足をひとつ。本書の目次と実際に掲載されているページが全部間違っているのはなかなかすごい(笑)。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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