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 バンコランと別れてアメリカへ戻ったジェフ・マールは、若い頃世話になったクエイル判事のもとを訪れた。だがマールの面前で、判事は毒を盛られて殺されそうになり、さらには判事の妻も命を狙われる。だが互いに牽制し合い、事を明るみにしようとしない家族。そこにはかつてマールが知っていたクエイル家の面影はない。彼らの確執を生んだものは果たして何なのか。判事とその妻、五人の兄姉。家族以外の誰かが犯人とは思えない状況で、遂に最初の犠牲者が。殺されたのは次女の夫……。

 毒のたわむれ

 本日の読了本はジョン・ディクスン・カー『毒のたわむれ』。ディクスン・カーの第五作にあたる作品。
 それまでの怪奇趣味一辺倒であったバンコラン・シリーズと、より膨らみを備えたギデオン・フェル博士やヘンリー・メリヴェール卿シリーズをつなぐ作品として位置づけられており、語り手は1~4作目のバンコラン・シリーズ同様ジェフ・マールが務める。ただしバンコランは登場せず、一応はノン・シリーズという扱い。
 面白いのは探偵役だ。パット・ロシターという青年が務めるのだが、人を煙に巻くような言動やときおり見せるコミカルな言動は、後のフェル博士やH・M卿を彷彿とさせる。だが、いかんせん、まだ両巨頭のような個性が確立されておらず、全体を覆う怪奇趣味を一掃させるような存在感には欠ける。ワトソン役のジェフ・マールが良い感じで一歩引いているので、よけい探偵役のギクシャクした演技が気になるのである。ぶっちゃけ浮きすぎ。
 ただし、カーが新しいスタイルを模索しており、バンコランからフェル博士へ移行している最中の作品だと思って読めば、作風の変化など見どころは多いだろう。

 とはいえ、そんなマニアックな読み方をせずとも、本作は普通の探偵小説と思って読んでも失望はしないはずだ。
 限られた空間で怪しげな人物ばかりを登場させ、そこでしっかりと伏線を張り、フェアに(しかし反則すれすれのところで)フーダニットを成立させてくれるのは、カーの作品でも珍しいのではないか。これでもう少しメイントリックを何とかしていれば(笑)、より評価される作品になったのだろうが、そこが実に惜しい。カーの中ではあまり目立つ作品でもないけれど、読んでおいて損はない。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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