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 『松本清張短編全集04殺意』を読む。収められた短編は昭和三十一年前後のもので、清張が会社を辞め、専業作家としてスタートした頃に書かれたものが中心。

 松本清張短編全集04殺意

「殺意」
「白い闇」
「蓆」
「箱根心中」
「疵」
「通訳」
「柳生一族」
「笛壺」

 以上が収録作品。このうち「蓆」「疵」「通訳」「柳生一族」が歴史物だが、本書に限っていえば歴史物が意外に淡泊で、前の三巻にあるような情念の深さはあまり感じられなかった。強いて言えば、復讐譚的な「疵」は導入こそ面白そうだが締めがあっけなくて食い足りない。進駐軍の通訳を江戸時代に置き換えて書かれたという「通訳」はさらに面白い設定なのだが、これまた主人公の苦悩が伝わりにくく、もったいない感じである。
 一方、現代物ではミステリ的な作品がいよいよ増えてきている。「殺意」は動機の問題を真っ向から扱った作品で、病んだ現代人には当時より主人公の気持ちが理解できるはずだ。また、「白い闇」はトラベルミステリのはしり。ネタは割れやすいものの、叙情と旅情の重ね方が上手く、トラベルミステリかくあるべし、というお手本的作品。
 本書中でもっとも気に入ったのは、実は非ミステリの「箱根心中」。動機をテーマにした「殺意」と対を為す作品で、いかにして恋愛関係にない二人が心中に至ったかというお話。ちょっと穿った見方をするなら、清張流の「奇妙な味」である。
 トータルの印象では、比較的さらっとした作品が多い感じである。本領発揮とまではいかないけれども、読みやすいといえば読みやすいし、「殺意」のような指向性がはっきり出ている作品でもあるので、入門用には意外とよいのかもしれない。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





涼さん

>「通訳」は、最後が(心理的に)どんでん返しのような気がしたのですが……

ミステリ的などんでん返しとは違うので、あまり読んでいるときはそういう意識はなかったですね。でも確かにどんでん返しと言えばどんでん返し。

「箱根心中」は、お互い夫婦生活に倦怠感を感じ始めている従妹同士の男女が、何となく日帰りで箱根にきたものの……という導入。浮気とか言う意識はなかったのに、偶然に巻き込まれた交通事故のため箱根に泊まる羽目となり、このまま帰っては不倫と間違われるに違いないという不安から、ますます帰れなくなり、ついには……というお話です。短いながらも、従妹の二人の心理の揺れがなかなか見事でした。
【2009/06/26 01:35】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

おはようございます

懐かしい作品ばかりですね。
「箱根心中:「白い闇」は、かなり新鮮な印象を受けたような印象があります。「箱根心中」についての詳細はまったく思い出せませんが、「白い闇」はよく覚えています。

「通訳」は、最後が(心理的に)どんでん返しのような気がしたのですが……
【2009/06/25 08:05】 URL | #LkZag.iM[ 編集]















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