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 マイクル・コナリーの『リンカーン弁護士』、下巻も無事読了。
 高級車リンカーンを事務所代わりに、広大なロサンジェルスを走り回って刑事弁護士稼業を続けるミッキー・ハラー。金にはうるさいが腕もよく、往々にして警察から恨まれることも多い。そんな彼に滅多にない稼ぎ話が持ち上がった。出会い系バーで知り合った女性に暴行した容疑で逮捕された男の弁護である。容疑者は金持ちの一人息子ということで張り切るハラーだったが、実はとんでもない裏があった……。

 リンカーン弁護士(下)

 文句なし。コナリーの作品は、もうどれをとってもハズレなしといってよいだろう。安定度抜群。ほんとに上手い作家になったものである。
 いつもの警察という得意分野を離れ、リーガル・サスペンスという手練れが山ほどいるジャンルに殴り込みをかけたので、若干心配ではあったのだが、まったくの杞憂である。下巻での法廷シーンや駆け引きの数々、そして周到に計算されたプロットなど、実にお見事。昔から法廷ものを書いている作家と言われても普通に信じられるレベルである。ラストの意外性も十分で、ミステリとしての期待ももちろん裏切らない。

 べた褒めついでに書いておくと、ボッシュ・シリーズとも相通ずる問題提議の部分も、本作では方法論を変えているのが面白い。
 例えばボッシュ・シリーズというのは、主人公側は常に虐げられている存在で、社会の矛盾や問題に対して、常にストレートに怒っている。もちろん感情移入もしやすいわけで、小説作法的には常套手段と言えるだろう。
 ところが本作では主人公のミッキー・ハラー自身が、怒りを受ける対象である。ハラーはボッシュと違い、報酬のためならかなりのことまでは割り切れる人間である。職業的犯罪者を弁護することもしょっちゅうで、そこには正義という絶対的価値観はない。相対的だったり、ときには法律の範囲内でいかようにも重きを変えてしまう。その結果、警察には嫌われ、ときには犯罪者にすら蔑まされることもあるが、今までの彼はそれでよしとしていた。しかし自らが事件に巻き込まれ、自身の大きなミスに気づいたことや、家族の身に危険が迫ることで、彼の内面にも変化が生まれ苦悩することになる。
 正義とは何なのか。司法制度とはそもそも何のためのものなのか。ハラーの抱える苦悩は司法制度の抱える苦悩でもある。司法制度を生かすも殺すも、すべては弁護士や検事次第。まさしく正義は変わっていくものなのである。だからこそ、だからこそ彼らの仕事には大きな意味があるのだ。

 事件は解決するが、結局、ハラー自身の問題に明確な答えが出るわけではない。しかし出ないなりに彼は再起の道を歩もうとしている。そこがいい。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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