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ジェラルド・カーシュ『犯罪王カームジン』(角川書店)

本日の読了本は、ジェラルド・カーシュの『犯罪王カームジン』。
近年、再発掘されまくった感のある異色作家短編だが、ジェラルド・カーシュはその重要な一角を占める作家だろう。特筆すべきはその豊かな想像力か。奇抜なアイディアをひねくれたユーモアで包み込む独特の世界は、カーシュならではのものだ。
そんなカーシュの作品の中でも、とりわけユーモアを前面に押し出したのがカームジン・シリーズ。希代の詐欺師にして大泥棒のカームジンが語る武勇伝、というか抱腹絶倒のホラ話といった方が適切なんだろうが、まあ正直ミステリ的には大した仕掛けはなく、ネタも他愛ないものが多い。やはり読みどころは、馬鹿馬鹿しい犯罪の設定であったり、あるいはカームジンの伝記作家たるカーシュとのやりとりにあるだろう。
ただし、楽しい作品集であることは間違いないのだけれど、こうしていざまとめて読むと、ひとつひとつの作品がライトすぎて、少々飽きやすいのが欠点か。本作にはボーナストラックとしてノン・シリーズの二作「埋もれた予言」と「イノシシの幸運日」も収録されているので、ほどよいタイミングで口直し的に読むのが吉かと。とりあえずイッキ読みにはご注意を。
「カームジンの銀行泥棒」
「カームジンとガスメーター」
「カームジンの偽札づくり」
「カームジンとめかし屋」
「カームジン脅迫者になる」
「カームジンの宝石泥棒」
「カームジンとあの世を信じない男」
「カームジンの殺人計画」
「カームジンと透明人間」
「カームジンと豪華なローブ」
「カームジン手数料を稼ぐ」
「カームジン彫像になる」
「カームジンと王冠」
「カームジンの出版業」
「カームジン対カーファックス」
「カームジンと重ね着した名画」
「カームジンと『ハムレット』 の台本」
「埋もれた予言」
「イノシシの幸運日」
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Comments
Edit
読みました。面白かったです。こういう話書きたいですねえ。
あの小ずるい幽霊が好きですね。できれば、カームジンの「仕返し」も読みたかったのですが、書かれなかったのは残念です。
一気読みはまずいと聞いたので、間を空けて読みました。ウソじゃありません。
3篇読んで、1時間ブランクをおき、また3篇読んでブランク、3篇読んでメシを食い、3篇読んでテレビを見て……。
読むのに2日もかかってしまいましたわい(笑)。
Posted at 13:05 on 08 02, 2009 by ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツさん
あらら、記事には一日に数編程度で読んでいってはいかが、という意味で書いたのですが(笑)。
私の場合、最初は楽しくて半分ぐらいは一気に読んだのですが、そのせいか途中でちょっと飽きてきちゃったというか(苦笑)。重い短編集も一気は辛いですが、軽いものも要注意です。
Posted at 14:26 on 08 02, 2009 by sugata