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 河出文庫のミステリー紀行シリーズから『瀬戸内ミステリー傑作選』を読む。収録作は以下のとおり。

赤江瀑「劇的な百面相の海」(序文)
連城三紀彦「藤の香」
寺内大吉「追憶が暴走する」
小松左京「小夜時雨(たぬき)」
横溝正史「泣虫小僧」
西村望「山の証言」
佃実夫「毛唐の死」
赤江瀑「サーカス花鎮」

 瀬戸内ミステリー傑作選

 ミステリプロパーでない方々の作品もけっこう多く収録されており、狭義のミステリとしての興味という点で言うと、ちょっと弱めの感は否めない。紀行ミステリの売りともいえる御当地の活かし方も、瀬戸内というかなり広い範囲に材をとっている割には物足りない。
 ではつまらないアンソロジーなのかというと、決してそんなことはない。ひとつひとつの作品はなかなか個性的なものが多く、全体的にも十分楽しめるレベルである。

 特に面白かったのは、スポーツ小説を多く残している寺内大吉の「追憶が暴走する」。これもマラソンをネタにした話で、主人公はかつて別府マラソンで一度だけ五位に入った記録を持つ男。それ以来、結婚にも仕事にも執着せず、ただひたすらマラソンを続けている。ところがその五位に入った大会で、実は彼は人に言えない秘密を二つも抱えていたのだ。その呪縛が男を悲劇に導いてゆく過程が犯罪小説的というか幻想小説的というか。結末は予想しやすいものの、マラソンでこういう話が書けるのか、というちょっとした驚きに満ちた作品。

 もうひとつ、西村望の「山の証言」も悪くない。瀬戸内のある島で、語り手はたまたまトビの雛を見つける。ところが見つけた場所は、牛の放牧を行う原っぱというありえないロケーション。飛ぶことも出来ない雛がなぜそんなところに? だがその雛がちょっと目を離した隙に消え失せ、語り手はさらに驚くことになる。島の関係者らの証言を元にこの謎を探る過程はまさにミステリだが、実はこれはノンフィクション。結局はっきりした答えは出ないものの、いや、いろいろな手があるものだ。

 というわけで、「ミステリー紀行シリーズ」というアンソロジーの趣旨からはやや遠いものの、意外な拾いもの的一冊。絶版ながら古書店では割と見かけるし、(お値段次第ではあるが)読んで損はない。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





ううむ、確かに「あう」でしたけれど……なんなんですかね(苦笑)

【2009/08/13 01:02】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

おもしろそうですね
【2009/08/12 17:05】 URL | あう #jNYYPcPE[ 編集]















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