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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

「奇想の王国 だまし絵展」Bunkamura ザ・ミュージアム

 既に土曜日のことになるのだが、なんとか渋谷のBunkamuraで開催されている「奇想の王国 だまし絵展」に行くことができた。ラスト二日、しかもお盆休み最後の土曜ということで、かなり混雑しているのかと思いきや、それほどのこともなくひと安心。チケット売り場だけは二十分待ちの行列だったが、こんなこともあろうかと、前売りチケットをあらかじめコンビニで買っておいたのでノープロブレム。たっぷりと奇想の数々に接してきました。

 奇想の王国だまし絵展

 まあ日頃から人を騙すような話ばかり読んでいるわけだし、昔からこういうものには目がない。さすがに最近の観光地でよくお目にかかるトリックアート美術館の類はご遠慮願いたいが、今回のはものが違う。
 目玉は上のパンフレットにも使われているアルチンボルドの「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」。本邦初公開だが、おそらくは誰もが一度は雑誌や何かで観たことはあるに違いない。あの果実などで描かれた肖像画である。この面白みと不気味さのいい案配。これを生で見れただけでも個人的には言うことないのだが、他にもマグリットやダリ、エッシャーといったメジャーどころをはじめ、浮世絵や掛け軸といった和物も意外に多く、実に楽しい。

 また、単純に絵を楽しむだけでもいいのだが、もひとつ踏み込めば、作者たちがなぜこんなものを書いたのか、そういうところを想像するのもだまし絵を楽しむ大きな魅力である。
 例えば「ウェルトゥムヌス」は時のローマ皇帝ルドルフ2世から依頼を請けた肖像画ではあるのだが、タイトルの「ウェルトゥムヌス」とは、季節の変化や果樹園を司り、豊穣をもたらすローマ神話の神のことでもある。つまりアルチンボルドは皇帝を神格化し、最上級の存在であることを視覚的に表現するために季節の果実や花々を用いたのであり、季節すなわち自然すらを支配する存在だと語っているのである。まあ、めいっぱいおもねっている気がしないでもないが、この時代の芸術家はそういうパトロン無しには成立しなかったから、それは仕方あるまい。とにかくだまし絵は、こういう目的や意図も、けっこう楽しめるということで。

 ところでこれら古典の作品やダリら巨匠の作品もよかったのだが、実は個人的に一番すごいなと感心したのが、現代アート。しかも日本人写真家、本城直季氏の作品。最初はミニチュアのジオラマ写真なのかと思ったが……これがなんとリアルな風景写真をミニチュア模型のように見せるという作品なのである。ネットで検索するとけっこう作品が見れますので、興味のある方はどうぞ(モニターだと若干インパクトは落ちるがそれでも相当なものである)。
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Comments
 
曾良/そら(SOLA)さん

えええ~、そんな番組をやっていたとは。それはぜひとも観たかった。こっちこそ、シマッタ!であります。
 
先日、民放のTVで本城直季氏の作品や手法が紹介されており、そこで初めてあのミニチュアの世界を知りました。次から次へと新しい才能が出てくるなあ~と感心しておりましたが、展覧会があったのですね・・・シマッタ!
 
織姫さん

なかなかのものですよね。展示物はB全ぐらいあったのですが、写真だとわかっていても、何度も目を凝らして見てしまいました。


ポール・ブリッツさん

ああ、そちら方面でしたか(笑)。何でもゆうちょ銀行のATMが残金ゼロになったとかいうニュースもありましたが、どこまでみんな注ぎ込んでるんだか(苦笑)。
ちなみに少佐さんが触れていますが、このあとは兵庫でやるそうなので、まだチャンスはありますよ。


少佐さん

おかげさんで滑り込みセーフです。
本城直季氏の写真の件ですが、ユニクロカレンダー見てみたら、ほんとにそっくりなんですね。いろいろネットでも情報を探して回ったんですが、やはりみなさんあれは誰の手によるものか不思議に思ってるみたい。でも某ブログで本城氏に影響を受けた人が作った、なんてことを書いている人もいましたね。でも、これはやはり影響というより、パク……あわわ(笑)。
 
ミステリー絵画展、何とか間に合ってよかったですね。兵庫まで行かなくて済んだ(笑)。
私のブログにも書きましたが本城直季氏とユニクロカレンダーの関係についてミステリーで培った推理力でなんとか突き止めて頂きたいものです(笑)。
 
見に行きたかったのですが、有明の某ビッグイベントにカネと時間を回してしまったため見られませんでしたとほほほ。

ドサ回りして……くれませんよねきっととほほほ。

けさ思ったこと。
山口雅也先生が「クイーンは正妻、カーは愛妾」というとカッコいいのに、
オタクが「××は俺の嫁」というとやたらと気持ち悪く感じるのはなぜだろう(笑)。
 
本城直季、観てきました。面白いですね。
純粋に「え!?」と思いました。いやあ、確かに現代だこれは。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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