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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


コーネル・ウールリッチ『耳飾り』(白亜書房)

 白亜書房からウールリッチ生誕100年記念として刊行された、「コーネル・ウールリッチ傑作短編集」の第五巻『耳飾り』を読む。まずは収録作から。

The Death Stone「耳飾り」
Picture Frame「射撃の名人」
Silent as the Grave「妄執の影」
Death Between Dance「間奏曲」
Husband「女優の夫」
The Number’s Up「選ばれた数字」
The Clean Fight「復讐者」
The Pennie-a-Worder「パルプマガジン作家」

 耳飾り

 本書に収められたのは1943年以降に発表された作品。ウールリッチの状態が悪くなってきたのは四十年代後半と一般的に言われているようだが、確かに本書の収録作も暗い内容のものが多く、ミステリとしてもバランスの悪いものが見受けられる。
 例えば「選ばれた数字」や「妄執の影」の不条理さはかなりきつい。一応はミステリ的なオチをつけているとはいえ、こういう展開にする必要があったのかというぐらい後味が悪い作品である。また、ラストを飾る「パルプマガジン作家」もまるでコントのようなラストを持ってきているが、これがウールリッチの強迫観念を垣間見ているようで、とても笑って読めるようなものではない。
 ところが小説とは不思議なもので、確かに完成度そのものは低くても、内在するパワーや情念という点では、ある意味、初期の傑作をも凌いでいたりするから面白い。
 とはいえ後期の短編すべてがそんな辛気くさい話というわけではない。「女優の夫」のようにとことん甘口の作品、「耳飾り」や「射撃の名人」といった普通(?)の傑作も収録されているのでご安心を。トータルではもちろんオススメである。

 解説で連城三紀彦が書いている。ウールリッチの作品には、今時のスリラーのような激しいスピード感はないけれども、心臓の鼓動のように、一定のリズムで着実に刻まれてゆく確かなサスペンスとスリルがある。それこそがウールリッチの魅力だ。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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