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 ザック・スナイダー監督による『ウォッチメン』を観る。原作のコミックはまったく知らなかったのだが、映画の予告編を観て以来ずっと気になっていた作品である。で、DVDでようやく観る機会を得たのだが、ははぁ、こんな話だったか。

 主人公は<ウォッチメン>(監視者)と呼ばれる者たち。ギャングや犯罪者と闘うため、仮面やコスチュームで正体を隠した一種の自警団である。彼らは日夜、平和と治安を守っていたが、その容赦ない行動はやがて大衆の反感を買ってしまう。そして遂に、マスクを着用した自警団行為を禁止するキーン条例が制定、ウォッチメンは活動停止を余儀なくされる。その結果、ある者は政府の認可を受けることができたが、ある者は引退し、別のある者は非公式のまま活動を続けることになった。
 この物語は、政府の公式の認可を受けていたウォッチメンの一人が、突然、何者かに襲われ、殺害されるところから幕を開ける。

 ううむ、ヒーロー物とはいえ、これは完全に大人向け。『ダークナイト』ばりの暗い世界観や描写のグロさなんかもあるけれど、米ソ冷戦の時代やベトナム戦争などの知識がないことには物語の背景が理解できず、<ウォッチメン>の設定すら意味不明だろう。
 物語は、政府非公認のウォッチメン”ロールシャッハ”の捜査活動を中心に流れていく。ウォッチメンの一人が殺害されたことをきっかけに、”ロールシャッハ”はヒーロー狩りの可能性に気づき、かつてのウォッチメンたちに警告を与えてゆく。この”ロールシャッハ”の捜査とウォッチメンたちの過去が平行して描かれてゆく。

 要は、核戦争の恐怖に怯える米ソ冷戦の時代、このリアルな世界にヒーローたちがいたら、どうなるかという物語である。”ロールシャッハ”やその他のウォッチメンの行動を通じて見えてくるのは、端的にいうとヒーローの存在意義。核戦争の危機という地球レベルの危機に、彼らは果たしてどう行動するのか、そもそもヒーローの存在など意味があるのか?
 小市民に成りはてたナイトオウル、神の域に達しようかというDr. マンハッタン、欲望のままに活きるコメディアン、ヒーローであったことをカミングアウトし今は巨大企業を経営するオジマンディアスなど、キーン条例以後の生き方はそれぞれのウォッチメンたち。彼らの価値観がぶつかりあうも最終的には……などとよくあるハリウッド映画を想像していると、とんでもないラストが待ち受けている。

 構成がけっこう複雑な上に、歴史的知識も必要、尺も長いとあっては、正直この面白さは伝わりにくかろう。Amazonなどのレビューでは案の定賛否両論だが、個人的には逆にカラッとしたヒーロー物の方があまり観る気が起きないので全然OK。『ダークナイト』と比べても遜色のない、素晴らしい一本。





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