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ジョセフィン・テイ『裁かれる花園』(論創海外ミステリ)
ジョセフィン・テイの『裁かれる花園』読了。
心理学の本でベストセラー作家となった元フランス語教師のミス・ピム。彼女はかつての同級生であり、現在では女子体育大学校長の職に就く友人のために、学校で講演を行うことになった。純真な学生たちに囲まれて幾日か過ごすうち、ピムは次第に校内に根付く不協和音に気づき始める……。
読めば読むほど、ジョセフィン・テイという作家が非常にバラエティに富んだ作風の持ち主だったことを思い知る。これまで個人的に読んできた『時の娘』『列のなかの男』『魔性の馬』といった作品にどれひとつとして同じようなタイプのものがなく、本作もまた明らかに他作品とは異なる着地点を目指して書かれているように思える。
ジャンルで言えば『裁かれる花園』は一応サスペンスである。しかしサスペンスの質が一風変わっている。普通のミステリであれば、当然危険にさらされるのは生命であったり財産であったりするのだが、本書では殺人事件どころか犯罪の影すらない。序盤は女子学生や教師の暮らしぶりがユーモアたっぷりにいきいきと描かれる。そして次第に明らかになる微妙な人間関係。その緊張感だけで全体の2/3を持たせてしまうのである。
これを退屈とみるかどうかで本書の評価は大きく変わりそうだ。だが本書においては人物描写がしっかりしてこそのラストのサプライズであり、納得もいくわけであるから、個人的にはこれは全然OK。テイの実力が存分に味わえる佳作である。
心理学の本でベストセラー作家となった元フランス語教師のミス・ピム。彼女はかつての同級生であり、現在では女子体育大学校長の職に就く友人のために、学校で講演を行うことになった。純真な学生たちに囲まれて幾日か過ごすうち、ピムは次第に校内に根付く不協和音に気づき始める……。
読めば読むほど、ジョセフィン・テイという作家が非常にバラエティに富んだ作風の持ち主だったことを思い知る。これまで個人的に読んできた『時の娘』『列のなかの男』『魔性の馬』といった作品にどれひとつとして同じようなタイプのものがなく、本作もまた明らかに他作品とは異なる着地点を目指して書かれているように思える。
ジャンルで言えば『裁かれる花園』は一応サスペンスである。しかしサスペンスの質が一風変わっている。普通のミステリであれば、当然危険にさらされるのは生命であったり財産であったりするのだが、本書では殺人事件どころか犯罪の影すらない。序盤は女子学生や教師の暮らしぶりがユーモアたっぷりにいきいきと描かれる。そして次第に明らかになる微妙な人間関係。その緊張感だけで全体の2/3を持たせてしまうのである。
これを退屈とみるかどうかで本書の評価は大きく変わりそうだ。だが本書においては人物描写がしっかりしてこそのラストのサプライズであり、納得もいくわけであるから、個人的にはこれは全然OK。テイの実力が存分に味わえる佳作である。
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