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 天気も悪く、相方は実家に帰省中なので、「東宝特撮映画DVDコレクション」の消化に努める。本日は本多猪四郎監督の『海底軍艦』。1963年の作品。
 もともと特撮映画は大好物だがマニアというほどではない。けっこう有名なものでも見逃していた映画がいくつかあって、「東宝特撮映画DVDコレクション」はそれを埋めるいい機会だったわけである。で、『海底軍艦』はそんな未見の映画のひとつ。日本SF映画の傑作のひとつとしての世評も高く、個人的にも注目の一作である。

 かつて世界を支配していたムウ帝国。大地震によって海底深く沈んだものの、その高い科学技術を駆使して密かに海底王国を建造していた。そして機が熟したとばかり、世界に対して降伏を要求するが、国連はあまりの荒唐無稽な話にこれを黙殺。怒るムウ帝国は世界各地の湾岸部や船舶を無差別に攻撃し、その軍事力を示すのであった。
 一方、第二次大戦の終戦間際、潜水艦で消息を絶った神宮司艦長率いる一隊があった。彼らは反乱を起こして失踪したと思われていたが、実は日本再興のために”轟天建武対隊”を組織し、南海の孤島で極秘裏に原子力万能戦艦”轟天号”を建造していたのである。
 ムウ帝国を倒すにはこの戦艦の力が不可欠。元上官や神宮司の娘、事件に関わっていた記者や刑事らは南海の孤島を訪れ、神宮司に再会したのだが……。

 おおお、やるじゃないですか。何といっても主役の轟天号が圧巻。ミニチュアとはいえ5メートルのものまで造ったというし、その存在感は図抜けている。都市の崩落シーンなども単なる破壊シーンとは異なり、地中に陥没するという具合だから、これをミニチュアで再現しているのがすごい。もちろんいまの時代の特撮と比べるのは酷だが、ミニチュアで当時ここまで作り込んだというのは大したものだ。ただ、ムウ帝国の怪獣マンダはちょっとしょぼいけど(苦笑)。

 ドラマとしても悪くない。怪獣ものはどうしてもこの辺がおざなりになるところだが、日本の敗戦を受け入れられない神宮司という男を通して、戦争というものの悲喜劇を巧みに表現している。
 公開された1963年は戦後まだ18年であるからキャスト・スタッフはほぼ戦争体験者である。だから戦争の悲惨さは十分に理解しているはずなのだが、この映画の作りには戦意高揚的な味つけもかなり加味されているのが曲者だ。
 特撮監督の円谷英二は戦時中、軍によって理不尽な目に遭いながらも戦記映画を撮ってきた。戦後は戦後で戦記映画を撮ったという理由からGHQによって公職追放という羽目になるのだが、同じ事をアメリカでやってきたディズニーは、戦後に見返りとして土地を提供され、ディズニーランドを建てたというのだから(この辺Wikipedia参考にしております)、日本の特撮関係者は忸怩たるものがあったはずだ。戦争に関するこういう複雑な思いがないまぜになって、それが彼らの映画の根底に流れている気がしてならない。
 ラストで、燃えさかるムウ帝国のもとへ自ら身を投げ出してゆくムウ帝国の皇帝。神宮司はそれを敢えて止めようとしないわけだが、ここにも神宮司のみならずスタッフの複雑な心境が秘められているといえるかもしれない。

 なお、神宮司を演ずるのは田崎潤。本作の主役は高島忠夫だが、田崎潤なくしてこの映画の成功はなかったかもしれないと思われるほどハマリ役である。ちなみに他にも上原謙や小泉博、平田昭彦、佐原健二、天本英世などなど主役級がずらりと並び、この映画への力の入り方がわかるというものだ。個人的には胡散臭い記者を演じる佐原健二がナイス。単なる二枚目かと思っていたら、こんな役もやっていたのか。

 なんだかずいぶん長い記事になったが、最後に原作について。
 『海底軍艦』はオリジナルの物語ではなく押川春浪が書いた『海島冐險奇譚 海底軍艦』が原作である(不覚にもこのDVDで初めてそれを知ったのだが)。押川春浪は日本SFの父というべき作家だが、この『海底軍艦』を書いたのは何と1900年つまり明治33年だ。しかも大学在学中に書いたというのだから、その想像力は恐れ入る。とはいうものの、映画はストーリーをほとんど変えてしまっており、ムウ帝国や怪獣マンダ等も登場しない。「孤島で海底軍艦を建造する」という基本設定のみ活かしているということである。






涼さん

『ゴジラ』ではゴジラと共に死す隻眼の科学者、『海底軍艦』ではムウ帝国の特殊工作員。平田昭彦も若い頃はいろんな役をやってますよねぇ。年をとってからは真面目そうな会社員とか多かったように思いますけれど。
【2009/12/05 23:49】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

こんばんは

俳優の名前が懐かしくて……(苦笑)
平田昭彦は、久我美子のだんなさんというイメージが強いです。
関係ない話で、すみません。
【2009/12/05 23:33】 URL | #LkZag.iM[ 編集]















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