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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

極私的ベストテン2009

 今年もあっという間に大晦日。年をとると月日の流れが早く感じるというが、いや今年はとりわけ早かった。そのせいかどうか本はあまり読めておらず(苦笑)、今年は95冊という結果。なんと昨年と同数であり、50%ほど巻き返すという宣言はまったく実現せず。来年はもっと精進します、というわけだが、その割にはベストテン選びはかなり苦戦した。
 それでは、2009年極私的ベストテンの発表!

1位 宮野村子『宮野村子探偵小説選I』(論創社)
2位 デニス・ルヘイン『運命の日(上・下)』(早川書房)
3位 ヘレン・マクロイ『幽霊の2/3』(創元推理文庫)
4位 マイケル・ギルバート『ケイティ殺人事件』(集英社)
5位 ディーノ・ブッツァーティ『神を見た犬』(光文社文庫)
6位 小川未明『文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船』(ちくま文庫)
7位 D・M・ディヴァイン『ウォリス家の殺人』(創元推理文庫)
8位 マイクル・コナリー『リンカーン弁護士(上・下)』(講談社文庫)
9位 ドナルド・E・ウェストレイク『泥棒が1ダース』(ハヤカワ文庫)
10位 木々高太郎、海野十三、大下宇陀児『風間光枝探偵日記』(論創社)

 今年は悩みに悩んだ。というのも宮野村子、デニス・ルヘイン、マイクル・コナリー、D・M・ディヴァインの候補作がそれぞれ二作ずつあり、すべてベストテン級だったからである。だが、それを全部入れては作家数も少なくなるし面白みもないので、今年はあえて一作家一作品に絞って選出した。

 1位はダントツ。異様な設定の上に繰り広げられる人間模様、その心理描写が圧倒的で、国内オールタイムベストテン級といってもいい。『宮野村子探偵小説選II』と合わせてぜひとも読んでもらいたい。
 2位は昨年の各種ランキングで上位入賞を果たした傑作。こちらも描写力が光る作品で、宮野村子もそうだが、ある程度気力がなければ読めない作品。正直、子供は読むな。なお、短編集『コーパスへの道』もオススメ。
 3位は待望の復刻。ともすると過大評価されがちな「幻の作品」だが、これは噂どおりの傑作だった。
 4位はぜひ復刻or文庫化してもらいたい傑作。一時期紹介が進んでいたマイケル・ギルバートだが、これを放っておいてはだめでしょう。
 5位と6位は非ミステリの短編集。アプローチは大きく異なるが、どちらも人間の心の底を垣間見せてくれるという部分では共通しているのかも。
 7位のディヴァインは『災厄の紳士』とどっちにしようか迷ったすえにこちら。8位のコナリーも『終決者たち』と迷ってこちら。本格とハードボイルド、ジャンルは異なるが両者ともハズレがないのが強みで、ぶっちゃけ出ている作品はすべて読んでおいて損はない。
 9位はドートマンダーものの短編集で、元気が出る本の代表格。人生はかくありたい。
 ラスト10位は完全な好みの世界で、一般のミステリファンにはまったくおすすめできない。でもこれが好きな人とはいい友達になれそうな気がする(笑)。

 このほか、アンソロジーは傑作が当たり前なのでランキングには入れなかったが、早川書房編集部/編『天外消失』(ハヤカワミステリ)は必読レベル。また、紀田順一郎/編『謎の物語』(ちくまプリマーブックス)は古書店で見つけたらとりあえず買っとけの一冊。
 評論系では住田忠久/編著『明智小五郎読本』(長崎出版)が大収穫であった。


 さてさて、こんな感じで今年も一年を終えようとしております『探偵小説三昧』。今年もいろいろとお世話になりました。また来年もご贔屓に。それでは皆様、よいお年を!

Comments
 
Sphereさん

あけましておめでとうございます。
宮野村子、IIだけ載っていたんですねえ。でも、周辺書でもなければ再刊でもないし、ましてや当然アンソロジーでもないので、何故そこに入れられたのでしょう(苦笑)。
そういえばミステリマガジンの編集長さんもTwitterやっているようなので、できれば聞いてみたいものです(笑)。
 
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくです。

宮野村子が1位と来ましたか~。
私も大好きなので、彼女を啓蒙して下さって嬉しいです(^o^)/
ところで以前、ハヤカワのランキング本に『宮野村子探偵小説選』が載っていないのはけしからんとおっしゃっていたと思いますが、2の方は「周辺書~再刊・アンソロジー」というページに載ってました。ってことは選択範囲外に位置づけられたってことでしょうかね。それにしても1はそこにもないし、やっぱり納得できないですが(^^;
 
矢吹利烏さん

はじめまして。あけましておめでとうございます。
何もないブログですが、参考になれば幸いです。今後ともよろしくお願いします。
 
あけましておめでとうございます。
はじめまして。
最近ミステリーに嵌りだして、いろいろ見て回っています。
外国の本にあまり詳しくないので、参考にさせていただきます。
 
>kanamoriさん
あけましておめでとうございます。
宮野村子ですが、似たような作風の人はいますけれど、ここまでこってりした描写で、独自の世界というか雰囲気を醸し出せる作家はそうそういないと思います。少しでも残りの作品が読めるよう、とにかく機会があれば褒め倒す所存です(笑)。
『ケイティ~』は完成度だけでいうと若干粗いところもあったりするのですが、ラストの衝撃は見事です。見かけたらぜひ。『十二夜~』は長らく積ん読ですので、これもそのうちに読んでみます。


>orhmさん
あけましておめでとうございます。
というか、はじめまして、になるんでしたっけ? ちょっと記憶が曖昧なんですが、いつも私もorhmさんのブログを楽しませてもらってますので、実は初めての気があまりしません(笑)。
宮野村子、ぜひ読んでみて下さい。今ならまだ普通にネット書店や大書店で買えると思います。
 
あけましておめでとうございます。

ベストテン参考になります。
特にダントツの一位。
なんとか手に入れて、読んでみたいと思います。
 
あけましておめでとうございます。
うーん、第1位が宮野村子、シブいです。「鯉沼家の悲劇」しか読んだことがなかったので、新春はこの2巻から始めます。
4位マイケル・ギルバート、書評された時からきになってました。たしか同時期の出版で「十二夜殺人事件」なんてのもありました。ときどき通俗スリラーみたいなのにあたるので敬遠気味でしたが、これも読まねば。
新春はペニー「警官の証言」とかホック、ラヴゼイの短編集とか要チェック本が多いです。
どうも今年も探偵小説三昧になりそう。
 
ポール・ブリッツさん

あけましておめでとうございます。
上橋菜穂子さんは読んだことがないですけど、「獣の奏者」とか「守り人」シリーズはさすがに知っています。オススメとあらば、ぜひそのうちチャレンジはしたいですね。ではでは、今年もよろしくお願いします。
 
あけましておめでとうございます。

宮野村子そんなにいいですか。ううん読みたいような読むと完全に夜中うなされるような(^^;)

その前に積読の本をどうにかしないとなあ。

ちなみに、ミステリではありませんが、上橋菜穂子という児童文学作家はものすごいファンタジーの書き手でありますなあ。筆力だけなら完全に宮部みゆきに匹敵していると思いますし、「獣の奏者」(まだ3巻までしか読んでませんが)なんかアーシュラ・K・ル=グィンが書いたといわれても信じてしまいそうであります。

だまされたと思って読んでくれ、といいたいところですが、そちらも積読の本がそんなにあるのでは……うーむ。
 
M・ケイゾーさん

あけましておめでとうございます。
宮野村子いいですよねぇ。年末のランキングでなぜここまで取り上げられないのか、不思議でしょうがありません。
M・ケイゾーさんもオススメなどありましたら、ぜひご教授下さい。今後ともよろしくお願いいたします。
 
 はじめまして

 2年ほど前からお邪魔させていただいてます。

 宮野は私も普通に読んで引き込まれてしまいました。

 とりあげている作品が興味あるものが多いので今年も参考にさせていただきます。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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