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 巷で話題の『第9地区』を観にいってきた。TVCMを見たときから気にはなっていたのだ。
 しかも公開以後は、監督や出演俳優が全員無名だったとか、でも製作はあのピーター・ジャクスンだとか、アパルトヘイトがテーマだとか、妙にぐろいとか、妙にコミカルだとか、エビちゃんが出ているとかw、もう虚実ごったまぜの様々な情報が溢れだしていて、これはもうとりあえず観るしかないなという感じ。出来はともかくとして、いま劇場で観ておくべき映画だな、と。
 ま、配給会社の戦略にのせられた気はするけれど(苦笑)、以前に『クローバーフィールド』を劇場で見逃してしまい、実に悔しい思いをしたことがあったので、二の轍は踏めない。こういうのは本といっしょで、迷ったらとりあえず買っておく。気になる映画はとりあえず観る。この精神である。


 第9地区

 さて、『第9地区』。
 南アフリカのヨハネスブルク上空に突如現れた巨大UFO。何らかの事故があったのか、中にいた乗組員、つまりエイリアンたちはみな衰弱しきっており、ときの政府は彼らを保護し、第9地区に隔離することにした。……が、それから二十年。第9地区はすっかりスラム化し、問題を起こすエイリアンによって、住民の怒りは最高潮に達していた。そこで政府はヨハネスブルクから遠く離れた場所に第10地区を設け、多国籍企業MNUにエイリアンの強制移住を依頼する。
 その一大事業の責任者に選ばれたのが主人公のヴィカス。平凡なよき家庭人の彼はこの抜擢に喜び、苦労しながらもエイリアンたちに立ち退き書類にサインをさせていく。だが、あるエイリアンの住居で妙な液体を浴びてから、事態はとんでもない方向へ……。

 巧いなあ。こちらの予想を少しずつかわして、興味をどんどんつないでいき、ラストまであっという間に引っ張っていってくれる。
 SFものでは侵略者たることが多いエイリアンを、難民として扱い、さらには南アを舞台にしてアパルトヘイトとシンクロさせるアイディアがまずいい。高度な科学力を持っているはずのエイリアンは今やただのチンピラと変わりなく、好物のキャットフード(言うまでもないがこれも麻薬などの比喩)を手に入れるため、武器をさばいたり、強盗をはたらいたりする。序盤はこれらの様子をことあるごとに繰り返し、世界観をまず刷り込ませる。
 こりゃかなり普通のエイリアンものと毛色が違うぞと思っているところへ、ほぼ同時進行で描かれる主人公の設定。エイリアンに立ち退きのサインを迫る彼は、責任者ながら極めて普通の男で、適度に良心的だが、適度にずるいところもあり、適度に勇敢で、適度に臆病である。この設定がラストまで効いていることで、逆に終盤で行動を共にするエイリアンの品格が目立ち、結局、人間の愚かさが浮き上がるという構造。しかも、無名の俳優を使うことでつまらない先入観が起こらないから、先を読みにくくしてくれる効果もある。
 中盤からは、ある液体を浴びた主人公に異変が生じ、ますますもって予想外の方向へ。主人公とエイリアンの一人がある目的のために共闘するところからは一気である。前半の伏線が効いていて、「あ、そうくるか」の連発。政治的な風刺でスタートした物語がいつのまにか極上のエンターテインメントへと昇華してゆく。
 本来であれば苦いはずのラストも、意外なほど後味良くまとめ、これは実にお見事な一本。頼むから続編なんて作るなよ(笑)。






>杣人・somabitoさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
ローラ・リップマンは名前こそ知っていましたが、ノーマークの作家だったので、初めて読んでその質の高さにちょっと驚いてしまいました。ぜひお楽しみ下さい。

『ガス人間第一号』の舞台は、日比谷シアタークリエでやっていたやつですね。私が知ったときにはもう終わっていましたが、これをご覧になったとは羨ましい。
原作は、ご想像どおり東宝の映画であります。

ではでは、今後ともよろしくお願いいたします。

【2010/05/09 18:44】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

こんにちは。お立ち寄り有難うございました。
ご紹介の『第9地区』私もとても興味がありますが、当地では上映していません。DVDかWOWOWを待つこととなるのでしょうね。
ローラ・リップマンを手もとに届いたので、ぺらぺらめくっていますが、期待がたかまります。
「ガス人間」は先日舞台のを見ましたが、同根でしょうか?こうゆうお話けっこう好きなんですが。

刺激を頂戴しております、有難うございます。
【2010/05/09 17:50】 URL | 杣人・somabito #sT9rQsUs[ 編集]

>ksbcさん
ビデオなのにフィルムっぽいのがRED ONEでしたっけ? テクニカルなことは詳しくないのですが、ドキュメンタリー・タッチを狙ってのことなんでしょうね。

読書は私もペースダウンがひどいですね。ksbcさんはコナリーやハートとかも消化しているようですし、私よりいいんじゃないですか(苦笑)。
一応、言い訳すると、最近は寝床で天城一に取りかかっていまして、これが長篇二本+αというボリュームなもので(しかも読みにくいし)、読んではいるが遅々として進まずといった感じです。
【2010/05/09 16:45】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

お久しぶりです。
昨年12月にNZからの帰り便で見ました。吹き替え・字幕無しのオリジナルでしたが、何となく楽しめました。
その時点で日本公開済みだとばかり思っていましたが、未公開だったようで、ちょっと得した感じです。
我々がNZで使用したRED ONEというデジタル・ムービーカメラを使用して撮ったということもあって、より興味深くみたのですが…、映像的にはその機材で撮る必要があったのかはやや疑問です。
お話は、かなりブラックな風刺が効いてて楽しめました。

ところで、読書のほうはここのところさっぱりです。
【2010/05/09 15:24】 URL | ksbc #-[ 編集]















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