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 日曜のことだが、巷で評判の『インセプション』を観にいった。一般にはディカプリオと渡辺謙の共演で話題なのだが、うるさがたのSFファンもけっこう内容に好意的だというから、これは気になるではないか。

 主人公のコブは、人の夢に入り込んでアイディアを"盗む"ことを生業とする、特殊な産業スパイ。だが現在の彼は、妻殺しの容疑で指名手配の身でもあった。この指名手配の抹消を条件に、ある企業の大物がコブに仕事を依頼した。ライバル企業の次期社長の夢に入り込み、会社を潰すようアイディアを"植え付けて"(インセプション)ほしいというのだ。"植え付ける"ことは"盗む"ことに比べてはるかに危険を伴う任務だ。だがコブは子供たちに会いたい一心から、仲間を募って一世一代の作戦に着手する……。

 インセプション

 監督は『ダーク・ナイト』のクリストファー・ノーラン。アメコミネタのSF特撮アクションでありながら、いわゆるヒーロー物にありがちな爽快さは極力抑え、テーマを掘り下げて、心理描写やサスペンスでヤマ場をもってくるという演出は、まだ記憶に新しい。
 本作もSFアクションという枠でくくれる作品ながら、肝は特撮やアクションにあらず。見せ場は夢の世界をどう描くかにあるといってよい。ノーランはそれをグラフィックに頼るのではなく、設定やルール付けをしっかり行うことで表現し、その結果としてハラハラドキドキの展開を体験させてくれるのである。夢のなかにまた夢の世界があり、さらにその夢の中に……という具合に多重構造の世界を創りあげ、同時進行する3~4本のストーリーライン。カットバックを同一の主人公たちで再現しているといった感じで、実はそれほど目新しいことをやっているわけではないが、それを新しそうに見せる、という点ではお見事。
 また、メインストーリーの他に、コブ自身の抱える妻殺しという要素を加え、それがメインストーリーに大きな影響を与えるという展開も悪くない。というか、これがないとほんとにただのSFアクションに終わる可能性があるわけで、こういうサイドストーリーの積み重ねがこの監督さんは巧い。『ダーク・ナイト』にも見られたパターンである。

 ただ、それでも気になる点はいろいろある。まず思ったのは、夢の世界というのは、もう少し異なる解釈や表現があってもよかったのではないかということ。騙し絵が再現された場面とか、ひとつひとつの見せ場では面白い表現もあるのだが、概ねは現実の延長過ぎる気がしないでもない。
 もう三十年ほど前に夢枕獏という作家が、サイコダイバーという設定で意識に潜る物語を既に描いている。映像ではないから一概には比較できないが、あちらは仏教や音楽など、意識のイメージを個人個人で異なるものとして描写していたのが秀逸だった。それに比べると本作は少々イージーな感がなきにしもあらずで、もっと派手にぶちまけても良かったようにも思う。
 さらに欲を言わせてもらえれば、メンバー個々のドラマがもう少しほしかった。コブ以外のメンバーの存在感が非常に薄く、単なる駒にしか見えないのが残念至極。

 まあ、そうはいっても、何でもかんでもドンパチする昨今のSFアクションよりは好感が持てるし、まずまず楽しめることは間違いない。だが過度な期待でもって観ると、アレ?ということにもなりかねないので、そこのところはご注意あれ。






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【2010/08/21 11:21】 | #[ 編集]

>清貧おやじさん
うう~ん、確かに派手な映像は最近の映画の中では少ない方ですし、中盤以降は入れ子細工みたいなストーリーですので、ストーリーや設定の面白みを感じられない人には、少々厳しいのかもしれません。
まあ、寝るほど退屈な映画ではないと思うのですが(苦笑)。
【2010/08/18 01:17】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

見に行こうかなと思っていましたが、
この映画を子供と一緒に見に行った知り合いが、
途中で寝てしまって、全く覚えていない
と言っていたので、躊躇しています。
子供と見に行ったのが間違いと思うのですが...
どうなんでしょう?
【2010/08/17 03:32】 URL | 清貧おやじ #27oFWF9A[ 編集]















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渡辺謙の堂々たる存在感。 人によっては、更に深く深くストーリーを検証し、違う解釈を導き出される方もおられるだろう。 あまり考え過ぎると、作品さながら夢の中でも考え込んでしまうのでご注意を。 観客の頭脳にも挑戦的で、壮大なスケールで描くお薦め脳内アクショ… 名機ALPS(アルプス)MDプリンタ【2010/08/30 10:12】

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