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クリスチアナ・ブランド『ぶち猫 コックリル警部の事件簿』(論創海外ミステリ)

クリスチアナ・ブランドの『ぶち猫 コックリル警部の事件簿』を読む。
原書は2002年に出た短編集『The Spotted Cat and Other Mysteries from Inspector Cockrill's Casebook』だが、このうちのいくつかの作品は既に創元推理文庫の『招かれざる客たちのビュッフェ』に収録されており、それ以外の作品が本書に収められたようだ。収録作は以下のとおり。
Inspector Cockrill「コックリル警部」(エッセイ)
The Last Short Story(The Telephone Call)「最後の短編」
The Kissing Cousin「遠い親戚」
The Rocking Chair「ロッキング・チェア」
The Man on the Roof「屋根の上の男」
Alleybi「アレバイ」
The Spotted Cat「ぶち猫」
ベストはやはり本書中で最もボリュームのある戯曲「ぶち猫」だろう。三幕物だが、一幕と二幕の逆転する構造にはしばし呆然。そして三幕でのラストにも唖然。常に緊張感が張りつめる展開、いかにもブランドらしい底意地の悪さが表れているラストで、これはぜひ小説にもしてほしかったと思える一作である。
ただ、総体的にやや物足りなさは残る。正直、美味しい作品は創元に持っていかれちゃった感じか。ジャンル的にも純粋な本格は少なく、どちらかというと軽めの変化球中心といった内容である。
とはいえ、コックリル警部について語ったエッセイとかショートショート、あるいは上で紹介した戯曲など、これまでとは違ったタイプの作品が読めるところは嬉しいかぎり。雰囲気はあくまでブランドのそれなので、過剰な期待をかけないでおけば、まずまず楽しめるだろう。
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