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 パトリック・クェンティンの『悪魔パズル』を読む。まずはストーリーから。

 女優の妻を空港で見送ったピーター・ダルースは、その帰り道で何者かに襲われ、気を失ってしまう。
 目が覚めたとき、そこは見知らぬ部屋。ベッドの上で、手足にはギプスが嵌められ、自分が何者かも思い出せなくなっていた。そこに現れたのは、母、妻、妹を名乗る三人の女たち。彼女たちは彼をゴーディという名前で呼び、動けない彼の世話を焼き始めるが、そこにはある陰謀が隠されていた……。

 悪魔パズル

 記憶喪失ものといえば、その裏に隠された陰謀と同時に、主人公の正体で興味を引っ張ることが多い。ところが本作では、記憶喪失者にシリーズ探偵のピーター・ダルースを配し、その手法を潔く捨てている点に注目。畢竟、物語の興味は、なぜ彼女たちはピーターを別人に仕立てようとしているのか、さらには、この陰謀からピーターがどうやって脱出するのかに掛かってくる。
 近年、本格派として再評価されつつ感のあるパトリック・クェンティンだが、そういう意味では、本作はサスペンスの書き手としての面が強く出た作品だ。誰が敵で誰が味方なのか、真の狙いは何なのか。着実に謎が解けてくるという一本道の展開ではなく、さまざまな手がかりを出し入れし、一喜一憂する状況を作り上げてサスペンスを盛り上げている。ちょいエキセントリックな女性キャラクターを配することで、読者を誤誘導しやすくするテクニックもなかなかのものである。

 登場人物の数などを考えると、ある程度は限られた手しか使えないのが、このタイプの作品の弱点。その中でも可能なかぎりのサプライズを得られるような工夫はされているし、ラストの一捻りも悪くない。普通ならシリーズものにそぐわないと思われる記憶喪失ものを、ここまでまとめ上げた腕前はさすがといっていいだろう。
 クラシックファンであれば読んで置いて損はないし、悪女ものがお好きな方にもおすすめしたい(笑)。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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