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 洋泉社MOOKから出た有栖川有栖/監修『図説 密室ミステリの迷宮』に、ひととおり目を通す。
 この洋泉社MOOKというのが、装丁やコンセプトなどが別冊宝島とそっくり。要はサブカル・おたく系のテーマをライトにまとめて解説するというタイプの本だ。
 あざとい商売するなあと思いつつも、ただ宝島はサブカルでもはるかにメジャーどころが主であるのに対し、洋泉社MOOKはよりディープなネタが多い。ミステリが流行っているから一冊作っちまえ、といった会議があったかどうかは知らぬが、そのミステリ本のテーマが今年のベストとかではなく「密室」というのも凄い。
 ジャンル的に見れば、芸術>文学>小説>ミステリ>本格ミステリ>不可能犯罪もの>密室ものという具合に絞り込めるであろう、この密室というテーマ。本格ミステリ好きなら必須かつ魅惑のキーワードではあるけれど、これで一冊本が作れるほど需要があるかどうかは、正直、疑わしい。ミステリ関連本でも、もっといろいろ売れそうなテーマはあるだろうに、あえて密室。そのニッチなテーマに挑んだことにまず拍手を送りたい(笑)。

 また、作りはライトっぽくとも、中身は案外まじめに勝負しているのが好感度大。何より監修の有栖川有栖を初めとして、錚々たるメンバーが寄稿している。
 監修やら書き手、協力者が強力なんだから出来がいいのは当たり前でしょというのは大きな間違いで、こういうライトな入門書やMOOKは編集者の(編者ではない、あくまで編集者)実力次第で如何様にも転ぶ。各記事の方向性にバラツキがあったり、構成がちぐはぐでは、ひとつひとつの記事の質が良くても、結果的に中途半端な出来になったりする。そういう意味では、本書は別冊宝島系のミステリ本の二番煎じには見えるけれども、内容は至極考えられており、丁寧な作りだ。
 まあ、ライトに見せてはいるけれど、どうせコアなファンしか買わないだろうから、下手なことができないのは関係者も承知の上なんだろう。そのコアなファンの期待を裏切ることなく、しかも関係者自身も楽しみながら作っている感じがして気持ちいいのである。

 図説 密室ミステリの迷宮

●序文   密室への誘い/有栖川有栖
      密室の分類を分類する/有栖川有栖
●特別対談 杉江松恋×有栖川有栖 名刺代わりの密室談義――密室というファンタジーを解体する
      二階堂黎人×有栖川有栖 人はなぜ魅了されるのか――? 密室、その見果てぬ夢と謎に迫る
●ミステリのプロが選んだ本当にすごい密室
●海外ミステリの傑作を巡る!万国密室博覧会/森英俊
●特別書き下ろし漫画!「神の密室」/喜国雅彦
●建築現場で密室を想う/安井俊夫
●あなたの彼女を密室好きにする法/青井夏海
●密室トリック仰天映像大全集!/小山正
●密室漫画傑作選/廣澤吉泰
●21世紀型密室の発展型 ビデオゲームと密室ミステリ/巧舟
●『Locked Room Murder』とアーディ/戸川安宣
●架空座談会 神津恭介×星影龍三×森江春策、密室ミステリ進化論を語る/芦辺拓
●インタビュー 空間と時間がひとつになるとき マジシャンDr.Leonに有栖川有栖から質問状!
他、コラムや密室名作ギャラリーなど

 中身はこんな感じ。
 さすがにメイン企画の「ミステリのプロが選んだ本当にすごい密室」は悪くない。50人弱のミステリ作家や評論家からとったアンケートによって選ばれた作品を、ちゃんと密室の見取り図と共に紹介してくれている。
 また、その元になったアンケートの全回答を掲載しているのも、定番企画ながら◎、各人の密室観などがうかがえて楽しい。
 とにかく内容が盛りだくさんで、ぱらぱらやっているだけでも非常に楽しい一冊。このミス的なガイドブックばかりでなく、こういう企画本は早川や創元でもいろいろとチャレンジしてほしいものである。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



















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