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 週末のDVD映画祭りの感想が追いつかず、ようやっと最後の一本をご紹介。ものはキャスリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』。2003年に起こったイラク戦争を題材とし、バグダッドで従事する米軍爆発物処理班を描いたドラマである。
 第82回アカデミー賞では元夫のジェームズ・キャメロンと争い、見事『アバター』を破って作品賞に輝いたのは、まだ記憶に新しいところ。内容もさることながら、話題性も十分の一本である。
 ただ、その栄光の裏では、アメリカ礼賛映画という否定的な見方もまた多い。本当はどっちなんだ、というわけで、レンタル落ちのDVDをさっそく借りてきた次第。

 ザラッとした質感の映像、淡々とした描写、起伏の少ないストーリー、そして何よりこの緊張感……、おお、なかなかハードボイルドな展開ではないか。ビグロー監督の作品は『ハートブルー』ぐらいしか観たことはなかったが、こんなに巧い監督だったのか。
 とりわけ見せ方に関しては見事である。芋でも掘っているかのように爆弾を地中から引っ張り出すシーン。狙撃の際に蠅が顔にたかるシーン。子供とのサッカーシーン。スーパーで無数に並ぶシリアルを呆然と眺めるシーン。再び再び戦場に赴くラストなどなど、印象に残る場面は非常に多い。
 この映画は戦争映画でありながら、いわゆる直接的なメッセージは語られないし、ドラマチックな展開もない。だが、そういう場面場面に効果的なイメージを持たせることで、戦争自体の無意味さを浮かび上がらせている。したがって『ハート・ロッカー』は紛れもなく反戦映画だ。だが、すべからく戦争映画は反戦映画であるべきで、実はこれは当たり前のことなのである。

 ただし、否定的な見方がされるのもさもありなん、という感じは確かにある。
 繰り返すが、ビグローは非常に巧い監督である。彼女の作るイメージは鮮烈で、戦争の悲惨さを非常に感じられる。ただ残念ながら、そこに描かれる米軍の姿はときにヒーローときに被害者であり、加害者という描き方はほとんどされていない。戦争には善も悪もない。戦争に加わった時点で、加害者であると同時に被害者であることは避けられない。だからその一面だけを描くというのは、明らかにそこに製作者の意志あるいはメッセージがあると言われても仕方ないのである。米軍礼賛映画、プロパガンダ映画と賞される所以である。
 これが単なるアクション映画ならここまでは言われなかったのだろうが、社会派ドラマとしての触れ込みでは、こういう批判も仕方あるまい。
 まあ、そうはいっても、それだけで切って捨てるのはあまりに惜しいのも確か。内容故に観る者を選ぶだろうし、事前にイラク戦争に対して多少の予習をしておいた方がいいとは思うけれども、個人的にはオススメ、としておきたい。


テーマ:映画感想 - ジャンル:映画




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