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 長らく積ん読にしていたミステリー文学資料館/編『江戸川乱歩と13の宝石』を読む。
 戦後の探偵小説の中心的存在だった探偵雑誌『宝石』。だが徐々に経営は悪化の一途を辿り、遂に昭和三十二年、江戸川乱歩が編集に乗り出すこととなる。乱歩の威光とコネクションによって探偵作家はもとより純文学の書き手も協力を惜しまず、『宝石』は盛り返しをみせたわけだが、本書はその掲載作から編まれたアンソロジー。

日影丈吉「飾燈」 
火野葦平「詫び証文」
宮野村子「手紙」
鷲尾三郎「銀の匙」
高城高「ラ・クカラチャ」
徳川夢声「歌姫委託殺人事件」
山田風太郎「首」
星新一「処刑」
小沼丹「リヤン王の明察」
久能啓二「玩物の果てに」
香山滋「みのむし」
飛鳥高「鼠はにっこりこ」
江戸川乱歩「薔薇夫人」

 江戸川乱歩と13の宝石

 そこらのアンソロジーと本書が大きく異なるのは、当時の掲載作に加え、乱歩が書いた推薦文(ルーブリック)を同時に収録していること。そして、何より乱歩の未発表にして未完の原稿「薔薇夫人」が収録されていることだ。この二点だけでも本書は絶対に「買い」ではあるが、その他の収録作もかなりいい。しかも予想以上に初読の作品も多くて、さらにご満悦。以下、作品ごとに簡単なコメントなど。

 日影丈吉「飾燈」は前振りが長くて、一見するとバランスの悪い構成に思えるのだが、実はその長い前振りが真相を非常に効果的にしている美しい一作。「かむなぎうた」などに通じる著者の持ち味が十分に生きている。
 火野葦平の「詫び証文」は探偵小説プロパーじゃないからこそ書ける遊び心に満ちた作品。でも正直、マニア臭が強すぎて好みではない。やりすぎだよ(笑)。
 「手紙」は、実に宮野村子らしい詩情豊かなサスペンス。他に書ける作家を思いつかないぐらい素晴らしい。
 鷲尾三郎「銀の匙」もすごい。ウォルポールの「銀の仮面」の本家取りということだが、いやあ下手するとパクリレベルかも(苦笑)。でもこの怖さは日本の農村の方が生きる気がする。一読の価値あり。
 徳川夢声「歌姫委託殺人事件」は連載エッセイの一篇だが、本作はノンフィクション風味。あまり興味わかず。
 高城高「ラ・クカラチャ」&山田風太郎「首」は今さら言うまでもない傑作。未読ならとりあえず読んどけの一作。
 小沼丹の「リヤン王の明察」は、紀元前三世紀の東洋を舞台にした歴史物。創元推理文庫の『黒いハンカチ』で初めて読んだ作家だが、あちらはニシ・アズマ先生シリーズ。ノン・シリーズでもこういう作品があったとは。コン・ゲーム的な楽しさに溢れた作品。
 久能啓二「玩物の果てに」もいい。一見、犯人当てのスタイルだが、結局、犯人の名前を出さないまま終えているところに作者のメッセージが伺える。
 「みのむし」は香山滋ならではの変態作品(笑)。主人公が魔性に取り込まれて終わり、というありきたりの流れに乗せないところが、さすが香山滋である。
 飛鳥高「鼠はにっこりこ」は、出来そのものはちょっと落ちるか。とはいえ未読作品がまだまだあるので、こうして読めるだけでもありがたい。
 江戸川乱歩の「薔薇夫人」は、ほんとにごく一部だけの状態なので、さすがに感想の書きようがない。一応、二つの大きな流れがあって、それぞれのドラマが錯綜していくのだろうという予想はできる。と同時に、どちらの流れもけっこうエログロ系展開が予想されるのもまた楽しからずや(笑)。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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