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ポール・ドハティ『白薔薇と鎖』(ハヤカワミステリ)
イマイチの天気が続くので、最近はドライブもご無沙汰。ペットどもがすこぶる不満げであるが、仕方ない。W杯の再放送など見ながら、せっせと著作リストの整頓などに励む一日。
読了本はポール・ドハティの『白薔薇と鎖』。
カーばりの不可能犯罪を扱うなどの本格志向で、かねてよりネット上では面白いらしいと噂されていた、イギリスの歴史ミステリ作家ポール・ドハティ。これまでは原書フリークな方々の感想だけでしか、その片鱗をうかがうことはできなかったが、遂に長篇がポケミスで日本初登場である。ただ、ポール・アルテのときみたいに、あまり過剰に期待するとガックリくるので、ほどほどに期待するのが吉であろう。
さて『白薔薇と鎖』。本作は愛すべき悪党ともいうべきロジャー・シャーロットと、その主人ベンジャミン・ドーンビーの二人組を主人公に据えたシリーズの第一作だ。16世紀のイギリスやフランスを股にかけ、殺人事件や王族の秘密を巡って、二人が大活躍する。
こんな風に書くと、なんだか時代物の冒険小説みたいに思えるかもしれないが、正にそのとおり。本作は序盤こそ密室殺人を出したり、本格っぽいムードを醸し出すものの、すぐにその中心的興味が活劇要素であり歴史要素であることがわかる。歴史的な背景がしっかり理解できないと、事件の全貌が掴みにくいのが弱点だが、キャラクターが際だっている上にストーリー展開が激しいので、英国の歴史の知識が浅くともそれなりに楽しく読むことができた。とりわけロジャーの破天荒なキャラクターは悪くない。歴史ミステリなどというとなかなかお上品な響きがあるが、女性読者は軽いショックを受けるかも(笑)。それぐらいの毒は持っている。
しかし、楽しいとはいっても、正直な話、この手の作品をそこまで読みたいとは思わない。あくまで期待していたのは本格系なので、できれば他のシリーズ、謎解きがメインとされる修道士アセルスタンものなどを次は訳してもらいたいものだ。多作でシリーズも多い作家だけに編集者も迷うところだろうが、次はぜひそちらで>早川書房様
読了本はポール・ドハティの『白薔薇と鎖』。
カーばりの不可能犯罪を扱うなどの本格志向で、かねてよりネット上では面白いらしいと噂されていた、イギリスの歴史ミステリ作家ポール・ドハティ。これまでは原書フリークな方々の感想だけでしか、その片鱗をうかがうことはできなかったが、遂に長篇がポケミスで日本初登場である。ただ、ポール・アルテのときみたいに、あまり過剰に期待するとガックリくるので、ほどほどに期待するのが吉であろう。
さて『白薔薇と鎖』。本作は愛すべき悪党ともいうべきロジャー・シャーロットと、その主人ベンジャミン・ドーンビーの二人組を主人公に据えたシリーズの第一作だ。16世紀のイギリスやフランスを股にかけ、殺人事件や王族の秘密を巡って、二人が大活躍する。
こんな風に書くと、なんだか時代物の冒険小説みたいに思えるかもしれないが、正にそのとおり。本作は序盤こそ密室殺人を出したり、本格っぽいムードを醸し出すものの、すぐにその中心的興味が活劇要素であり歴史要素であることがわかる。歴史的な背景がしっかり理解できないと、事件の全貌が掴みにくいのが弱点だが、キャラクターが際だっている上にストーリー展開が激しいので、英国の歴史の知識が浅くともそれなりに楽しく読むことができた。とりわけロジャーの破天荒なキャラクターは悪くない。歴史ミステリなどというとなかなかお上品な響きがあるが、女性読者は軽いショックを受けるかも(笑)。それぐらいの毒は持っている。
しかし、楽しいとはいっても、正直な話、この手の作品をそこまで読みたいとは思わない。あくまで期待していたのは本格系なので、できれば他のシリーズ、謎解きがメインとされる修道士アセルスタンものなどを次は訳してもらいたいものだ。多作でシリーズも多い作家だけに編集者も迷うところだろうが、次はぜひそちらで>早川書房様
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