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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ピーター・ディキンスン『エヴァが目ざめるとき』(徳間書店)

 ピーター・ディキンスンの『エヴァが目ざめるとき』を読む。
 ミステリではなくSF作品なのだが、ヤングアダルト向けということもあってか、かなりストレートなお話。ディキンスンにはミステリで変化球ばかり読まされてきたので、こういうちゃんとした話(?)も書けるのだと、まず変なところに感心してしまった(笑)。

 野生動物のほとんどが絶滅し、人類もゆるやかに滅びようとしている近未来が舞台。チンパンジーを研究する父と出かけた13歳の少女エヴァは、大事故にあって昏睡状態となってしまう。やがて200日を超える長い眠りから目覚めた彼女は、自分の体の異変に気づく。そう、彼女の命は、チンパンジーの体に記憶を移植することによって、かろうじて取り止めることができたのだ……。

 チンパンジーの体を持つしかなくなった少女は、どのように折り合いをつけて生きていくのか。暗い未来しか残されない世界で、人類はどこへ行こうとしているのか。エヴァは何を成すべきなのか。
 さすがにこれだけテーマが重いと、いろいろ考えさせられることも多い。だが意外に悲壮感が少ないのは、主人公のエヴァが自分の境遇を悲観することなく、前へ前へ進んでいくからであろう。ただし、逆にエヴァの葛藤が少なすぎるところが不満だったりもするわけで、そこが本作の弱点といえなくもない。大人向けではないから作者も加減をしているのだろうが、読後感が悪くなろうと、もう少しエヴァの苦悩を描いてもらわないことには物足りなさは否めない。なんとも惜しい一冊である。
 とまあ、やや辛口にはなったが、実はこのテーマと舞台設定だけでも一読の価値はある。普段SFに縁がない方こそぜひ。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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