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 1959年に公開された東宝映画『日本誕生』を観る。監督は稲垣浩。主演は三船敏郎。
 十二代景行天皇の時代を舞台とし、小椎命(オウスノミコト)のちの日本武尊(ヤマトタケルノミコト)を主人公にした物語。小椎命は景行天皇の第二子にあたり、その実直かつ勇猛な性格で民からも愛されていた。だが、景行天皇の背後で実権を握っている大伴建日連(オオトモノタテヒノムラジ)にとって、意のままに操ることができない小椎命は邪魔者でしかない。
 大伴建日連は小椎命を手っ取り早く取り除くため、景行天皇を利用して、小椎命に西方を牛耳る熊曽健(クマソタケル)や東方の征伐を命じるのだが……。

 日本誕生

 本作は東宝の1000本製作記念映画であり、その豪華キャストと壮大なスケールはいまでも特筆ものといえるだろう。上映時間も3時間に及び、正に超大作という形容がふさわしい一作。
 実は本作も東宝特撮DVDコレクションの一本である。したがって天変地異や八岐大蛇という怪獣?などを題材とした特撮スペクタクルシーンもそれなりに盛り込まれてはいる。だが、やはり本作においては、特撮映画というより歴史映画もしくは時代映画としてのアプローチの方がしっくりくるだろう。
 そもそもこの時代を描いているという希少性だけでもポイントは高いわけだが、その物珍しさに胡座をかくことなく、メッセージ性もきっちり織り込まれている。しかも変にこねくりまわすことなく、普遍的で実に力強い。
 争いに明け暮れる小椎命が自分たちの在り方に疑問を抱き、やがて話し合いで解決することの重要性を理解し、神楽が鳴り響くような平和な世を望むようになる。いやあ、実にシンプルかつわかりやすい。東宝の超大作は往々にして長すぎ、ダレ気味の場合も少なくないのだが、本作の場合は三時間という長さがけっこう有利に働いている。この長さがあればこそ小椎命の変化も自然に受け入れられ、メッセージも伝わりやすい。まあ、それでも少しだれるけれど(笑)。

 上でも書いたが、豪華キャストの共演も魅力のひとつだ。まさに東宝の名優を一堂に集めた感がある。小椎命を演じる三船敏郎。ヒロインに司葉子、上原美佐、水野久美、香川京子。他にも中村鴈治郎、東野英治郎、志村喬、鶴田浩二、田崎潤、杉村春子、田中絹代、平田昭彦、原節子、柳家金語楼、乙羽信子、加東大介、小林桂樹、朝汐太郎、左卜全、榎本健一、有島一郎、三木のり平、宝田明、久保明……。もう信じられないぐらい。この中には重要ながらも出演時間わずか数分という人も多くて、非常に贅沢。当時の東宝の底力をみる思いである。
 ややダレ気味の三時間をしっかり持たせるのは、やはりこれらキャストの頑張りである。主演の三船敏郎は言うに及ばず、悪役として圧倒的な存在感をみせる東野英治郎、小椎命を日本武尊として生まれ変わらせる役柄の鶴田浩二なども見逃せない。
 また、劇中劇として語られる天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸に閉じこもるエピソードでは、原節子の文字通り神々しい美しさもさることながら、乙羽信子演ずる天宇愛女命(アメノウズメノミコト)の裸踊り?も要注目で、脇を固めるエノケン初めとする当時の売れっ子喜劇役者総出演という盛り上げもまた素晴らしい。

 そういうわけで映画としての完成度はまずまずなれども、この神代の世を描いた数少ない歴史映画ということ、東宝がもっとも元気な頃のパワーや熱気を感じられる映画ということを考慮すれば、やはり一度は観ておきたい映画と言えるのではないだろうか。





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