- Date: Fri 08 04 2011
- Category: 海外作家 ホック(エドワード・D)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿II』(創元推理文庫)
エドワード・D・ホックの『サイモン・アークの事件簿II』を読む。
ホックの生んだ探偵は数多いが、アークはオカルト探偵としてひときわ異彩を放つ存在だ。本書はそのアークの活躍譚の中から著者自身がセレクトした、いわば自選作品集の第二弾である。

二千年の長きにわたり、悪魔を探し求める謎の男サイモン・アーク。彼の行くところ、常に超自然現象が発生し、怪奇な事件が巻き起こる。だが、その裏に隠された真実は……。
本シリーズ最大の特徴は、主人公自身が超自然的存在であるということ。にもかかわらず、事件そのものはいたって真っ当な本格ミステリとして解決される。この相反する二つの要素がいろんな意味でポイント。
まあ、ホックの書くミステリは常に謎解きがテーマなわけだから、仰々しくオカルト探偵と謳っていても、あくまで味つけレベルであるのは致し方ないところ。その分読者は構えることなく、安心していつものホックの世界に浸れるわけだ。
ただ、個人的にはそういうところが物足りなく感じることもあるわけで、これがやはりオカルト探偵として知られるホジスンの『幽霊狩人カーナッキ』あたりだと、バランスは悪いけれども超自然現象と本格のどちらで着地するか最後までわからないという変な魅力がある。ホックの作品はいい意味でも悪い意味でも「軽み」がキーだから、こういうダークなムードには元々似合わないのかもしれない。実際、アーク・シリーズもスタート当初はオカルト趣味全開だが、後期の作品ほどオカルト趣味は薄れているようだ。
The Man from Nowhere「過去のない男」
City Of Brass「真鍮の街」
The Avenger from Outer Space「宇宙からの復讐者」
The Vultures of Malabar「マラバールの禿鷲」
The House of a Hundred Birds「百羽の鳥を飼う家」
No Blood for a Vampire「吸血鬼に向かない血」
The Graveyard Ghoul「墓場荒らしの悪鬼」
The Gravesend Trumpet「死を招く喇叭」
収録作は以上。全体的に安心して読めるレベルではあるが、上で書いたように「軽み」が先に立つためあまり怪奇な方面を期待すると肩すかしを食らうので念のため。二つ目の「真鍮の街」は中編で、ネタとしても味わい的にも本書中のベストであろう。
ホックの生んだ探偵は数多いが、アークはオカルト探偵としてひときわ異彩を放つ存在だ。本書はそのアークの活躍譚の中から著者自身がセレクトした、いわば自選作品集の第二弾である。

二千年の長きにわたり、悪魔を探し求める謎の男サイモン・アーク。彼の行くところ、常に超自然現象が発生し、怪奇な事件が巻き起こる。だが、その裏に隠された真実は……。
本シリーズ最大の特徴は、主人公自身が超自然的存在であるということ。にもかかわらず、事件そのものはいたって真っ当な本格ミステリとして解決される。この相反する二つの要素がいろんな意味でポイント。
まあ、ホックの書くミステリは常に謎解きがテーマなわけだから、仰々しくオカルト探偵と謳っていても、あくまで味つけレベルであるのは致し方ないところ。その分読者は構えることなく、安心していつものホックの世界に浸れるわけだ。
ただ、個人的にはそういうところが物足りなく感じることもあるわけで、これがやはりオカルト探偵として知られるホジスンの『幽霊狩人カーナッキ』あたりだと、バランスは悪いけれども超自然現象と本格のどちらで着地するか最後までわからないという変な魅力がある。ホックの作品はいい意味でも悪い意味でも「軽み」がキーだから、こういうダークなムードには元々似合わないのかもしれない。実際、アーク・シリーズもスタート当初はオカルト趣味全開だが、後期の作品ほどオカルト趣味は薄れているようだ。
The Man from Nowhere「過去のない男」
City Of Brass「真鍮の街」
The Avenger from Outer Space「宇宙からの復讐者」
The Vultures of Malabar「マラバールの禿鷲」
The House of a Hundred Birds「百羽の鳥を飼う家」
No Blood for a Vampire「吸血鬼に向かない血」
The Graveyard Ghoul「墓場荒らしの悪鬼」
The Gravesend Trumpet「死を招く喇叭」
収録作は以上。全体的に安心して読めるレベルではあるが、上で書いたように「軽み」が先に立つためあまり怪奇な方面を期待すると肩すかしを食らうので念のため。二つ目の「真鍮の街」は中編で、ネタとしても味わい的にも本書中のベストであろう。
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ポール・ブリッツさんの仰ることはもっともですね。私も頭ではそう理解しているはずなんですが、いつもこの「ホックらしさ」が逆に引っかかってしまうんですよね(笑)。
確かにサム先生のシリーズなどは特にホックらしさが顕著なので、こってり目が似合わないというのもごもっとも。
ただ、私はミステリが死や犯罪というものを扱う以上、作者にはある程度の覚悟や意志をもって創作にのぞんでほしいと考えております。もちろん、それを逆手にとって、あえて死を茶化したりパロディにするのは全然かまわないんですが、鈍感さが先に立っていたり、単に無邪気なだけだったり、というのは生理的に受け付けないんですね。
じゃあホック読むなよ、という声も聞こえてきそうですが(苦笑)、でも実はホックはノン・シリーズやサム・ホーソーン、サイモン・アークなど、いろんなタイプを書き分けられる人なので、そこをあっさり流されると困っちゃうというか。手、抜くなよって感じですか。
サイモン・アークものはそもそもシリアス向きの素材なのに、あくまでサムの形式で片付けようとしているところが気になるんだと思います。
なんだか取りとめなくなってしまいましたが、とりあえずノン・シリーズ作品の方もハイレベルですから、ぜひお読みください、ということで(笑)。