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 『刑事コロンボ/黄金のバックル』を観る。通算で三十九作目。
 ゲストスターはジョイス・ヴァン・パタン。『逆転の構図』で、コロンボを浮浪者と間違えて食事をめぐもうとした、あの修道院のシスター役の人ですな。今回はそんなほのぼとした役どころではなく、強い意志をもった殺人犯という役柄である。

 ジョイス演ずるルースは、家族で経営する美術館の館長を務めている。若い頃からすべてを捨て、美術館に打ち込んできた彼女にとって、この仕事はかけがえのないものだった。だが、経営の行き詰まりから理事を務める弟が美術館売却を検討していることを知り、弟の殺害を決意する。折しも借金まみれの警備員がいたため、彼を騙して美術館へ強盗に入らせ、これを射殺。さらにはその騒ぎを聞きつけてやってきた弟も射殺して、相打ちに見せかける。だが捜査を進めるコロンボは、その強盗現場に第三の人物がいたことを嗅ぎつけ……。

 完全犯罪を企むルースだが、あちらこちらに粗があって、ミステリとしては物足りない。コロンボでなくともすぐに気づきそうなミスがあるし、硝煙反応とか証拠品の扱いとかもちょっと雑。動機も理解は出来るが、犯行の実行へが性急すぎるんじゃないかとか、ううむ、これではとても傑作と呼べるしろものではない。

 それでも管理人はこの作品、決して嫌いではない。それは何といっても犯人の心理描写が魅力的だから。女性の幸福、生き甲斐、価値観の違い、家族への想いなどなど……そういった諸々がないまぜになったルースの暗澹たる内面を、ジョイス・ヴァン・パタンは見事に演じきる。
 この物語はいつになく重く暗いトーンに包まれている。コロンボも犯人の心情を思いやるけれど、だからといって捜査の手を緩めることはなく、犯人を罠にかけることにも躊躇いはない。だからこそ犯人の悲しみが、ラストでより観る者に響いてくるのだ。

 ただ、念のために書いておくと、本作は重いだけの話ではない。すぐに気絶するルースの脳天気な姉、おそろしいほど融通の利かない部下の刑事、花粉症のコロンボ、美容院でのコロンボなど、お笑いシーンもいつになく多い。娯楽作品としてのバランスを考え、工夫を怠らないスタッフはさすがである。


テーマ:刑事コロンボ - ジャンル:映画





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【2011/05/06 20:13】 | #[ 編集]















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