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 鮎川哲也のジュヴナイルを集めた短編集『悪魔博士』を読む。少年探偵の鳥羽ひろし君を主人公とする連作短編と、同じく少年探偵、森冬彦君を主人公とする表題中編の計11作。

『鳥羽ひろし君の推理ノート』
 「テープの秘密」
 「真夏の犯罪」
 「幻の射手」
 「クリスマス事件」
 「冬来たりなば」
 「油絵の秘密」
 「幽霊塔」
 「黒木ビルの秘密」
 「ろう人形のナゾ」
 「斑鳩の仏像」
『悪魔博士』

 悪魔博士

 先日の記事でクリーク譚を「推理と冒険」の物語と書いたが、ミステリもまたエンターテインメントのひとつであるからには、この冒険の部分をきっちりクリアすることが重要である。まあ、ここでいう冒険とは文字通りの冒険というより、ニュアンスとしてはドラマ性とかに近いかもしれない。
 実際、商業的にも大成功を収めたホームズやルパンの物語は、他のミステリに比べてこの冒険の部分が非常によくできていた。娯楽の種類が少なかった当時において、大衆が望んでいたのは、何よりもまず物語としての感動だったはず。もちろん一概には言えないけれど、本来、大衆文学とはそういうものだろう。

 で、本日この『悪魔博士』を読み終えて、そういやジュヴナイルもまったく同じだなと思った。
 あえて「ジュブナイル」「児童文学」などとして大人向けと分けるからには、やはりそこには教育的視点がある。ただ、いくら教育的に正しいお話でも、そのクライマックスに至るまでの過程がつまらなかったり説教臭かったりでは、とてもじゃないが子供に読んでもらえるわけがない。むしろ、教育的配慮等の制限=ハンディがあるからこそ、大人向け以上に、よけいシビアに「冒険」の部分を求められるといえるだろう。

 そこで鮎川哲也である。ガチガチの本格探偵小説の書き手として知られる著者だが、少年向けの作品でここまでツボを押さえているとは正直、意外だった。
 加えて著者最大の持ち味である、謎解きやトリックの部分についても手を抜いているふうはない。ページ数などの制限もあるからもともと複雑な話にはしようもないし、ほぼメインのトリックやネタ一本で押し切る作品が多いのだが、これがかえって強い印象をもたらして心地よい。少年向けゆえ誇張されたネタも少なくないが、ややもするとトンデモ系に流れている作品もあり、これもまた楽しい。

 ちなみに本作は1988年の刊行。ここ数年、光文社文庫では精力的に鮎川哲也作品の収録が進められているけれど、せっかく以前こういうものを出していたのに、これを品切れにしておくのはちょっともったいないなぁ。とはいえ、それほど需要があるようなものでもないだろうし、難しいところではあるが。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





M・ケイゾーさん

そもそも子ども向けですから、ジュヴナイルが嫌いな人がいるのは不思議でも何でもありませんよ。あくまで嗜好の問題であって、センスの問題ではないと思います。
かくいう私は「ミステリマガジン」のコナンを受け付けない派でしたから(苦笑)。そういえば「SFマガジン」の今月号は初音ミクですが、これも思い切ってますね。表紙みたらゲーム雑誌かと思いました。

結城昌治再燃ですか、いいですね。私もそのうち気合い入れて読みたい作家です。
【2011/06/19 11:24】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

 ジュヴナイルは、正直昔も今も好みではありません。
 鮎川ファンとして未読の作品が読めるのはうれしくてすぐ読みましたね。「いかにもジュヴナイル」という印象は今でも残っています。そういうセンスはもっていたのでしょうね。(センスのもちあわせがない私が言うのもなんですが)

 現在、結城昌治再読ブーム爆発で他の作家が読めません。
【2011/06/19 11:08】 URL | M・ケイゾー #-[ 編集]















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