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押川春浪『押川春浪集 明治探偵冒険小説集3』(ちくま文庫)
ちくま文庫の『押川春浪集 明治探偵冒険小説集3』を読む。タイトルどおり明治の探偵小説や冒険小説をテーマにしたシリーズの一冊で、押川春浪の作品をまとめたもの。ちなみに、1巻は『黒岩涙香集』、2巻が『快楽亭ブラック集』、4巻に『傑作短篇集 露伴から谷崎まで』がある。
さて、押川春浪である。東宝の特撮映画『海底軍艦』の原作者が押川春浪だったことを知ったのも割と最近のことなので、まあ、あまり偉そうなことは言えないが、それでも彼が日本冒険小説の祖、あるいは日本SF小説の祖ともいうべき存在であることはもちろん知っていた。
明治末期に活躍し、これらのジャンルを確立させるとともに一大ブームを起こした偉大な功労者、押川春浪。だが、性格に豪放磊落すぎるところが多々あり、非常につきあいにくいタイプであったようだ。創作だけでなく雑誌の創刊などにも奮闘したが、やがて酒に溺れ、体力低下から肺炎をこじらせ、三十七歳という若さでこの世を去っているのが如何にも明治の文豪っぽい。
作風的には、冒険小説とSF小説の要素を合わせたような娯楽もの=武侠小説と呼ばれる作品群で人気を博した。
とまあ、日本探偵小説史において、その重要度がトップクラスであることは間違いない。探偵小説のブログを標榜しているからには一度は読むべき作家なのだが、ここにきてようやく手に取った次第。
収録作は以下の三作。「銀山王」は短めの長篇、他は中編といったボリュームである。
「銀山王」
舞台は港町アデン。町一番の資産家の娘によって恋人を奪われ、希望も財も失った令嬢がある大金持ちの老人の助力を得て、復讐を果たす。
「世界武者修行」
御曹司にして無銭無家の蛮勇快男児、団金東次(だん・きんとうじ)。如意棒片手に世界へ船出し、勧善懲悪を断行するという物語。
「魔島の奇跡」
荷担ぎの蘭平が航海王船乗伯爵の目に留まり、酒宴に招かれて伯爵の冒険譚を聞くというお話。春浪には珍しい「船乗りシンドバッド」の翻案。

うう、正直これは厳しい。残念ながらそこまで面白くは読めなかった。
それでも割合に楽しめたのは「銀山王」。あとの二つは主人公に頼るところが大きいというか、物語自体に思ったほど力がない。間延びした感が強く、とにかく興味が持続しないのである。物語が浅いこともあるだろうが、一番の原因は語り口だろう。テンポが悪いわけではないのだが、どうにもリズムが合わず、読んでいていちいち躓く。こちらの素養もあるんだろうけれど……ううむ。
一方、「銀山王」が比較的楽しめたのは、多少なりとも探偵小説的要素が含まれている点が大きいだろう。恋人も財産も一切を失ったヒロインが、どうやって富豪の一族に復讐を遂げるのか。コンゲームといえば褒めすぎだが、ちゃんと計略を用いるのがミソである。
ただ、令嬢が没落する前半があまりにくどい。その分、後半の反撃パートでのカタルシスに活きればいいのだが、もったいないことに著者自らさっさと計略のネタバレをするのがいやはや何とも。せっかくのサプライズも台無しである(まあ簡単に予想はつくけれど)。
ということで、いま純粋な娯楽小説として楽しむには、さすがに難しいものがあるのは否めない。とはいえ作品自体はまだまだあるわけなので、その辺り詳しい方、「これを読まないでどうする」というのがあればぜひ御教授いただきたいところである。
さて、押川春浪である。東宝の特撮映画『海底軍艦』の原作者が押川春浪だったことを知ったのも割と最近のことなので、まあ、あまり偉そうなことは言えないが、それでも彼が日本冒険小説の祖、あるいは日本SF小説の祖ともいうべき存在であることはもちろん知っていた。
明治末期に活躍し、これらのジャンルを確立させるとともに一大ブームを起こした偉大な功労者、押川春浪。だが、性格に豪放磊落すぎるところが多々あり、非常につきあいにくいタイプであったようだ。創作だけでなく雑誌の創刊などにも奮闘したが、やがて酒に溺れ、体力低下から肺炎をこじらせ、三十七歳という若さでこの世を去っているのが如何にも明治の文豪っぽい。
作風的には、冒険小説とSF小説の要素を合わせたような娯楽もの=武侠小説と呼ばれる作品群で人気を博した。
とまあ、日本探偵小説史において、その重要度がトップクラスであることは間違いない。探偵小説のブログを標榜しているからには一度は読むべき作家なのだが、ここにきてようやく手に取った次第。
収録作は以下の三作。「銀山王」は短めの長篇、他は中編といったボリュームである。
「銀山王」
舞台は港町アデン。町一番の資産家の娘によって恋人を奪われ、希望も財も失った令嬢がある大金持ちの老人の助力を得て、復讐を果たす。
「世界武者修行」
御曹司にして無銭無家の蛮勇快男児、団金東次(だん・きんとうじ)。如意棒片手に世界へ船出し、勧善懲悪を断行するという物語。
「魔島の奇跡」
荷担ぎの蘭平が航海王船乗伯爵の目に留まり、酒宴に招かれて伯爵の冒険譚を聞くというお話。春浪には珍しい「船乗りシンドバッド」の翻案。

うう、正直これは厳しい。残念ながらそこまで面白くは読めなかった。
それでも割合に楽しめたのは「銀山王」。あとの二つは主人公に頼るところが大きいというか、物語自体に思ったほど力がない。間延びした感が強く、とにかく興味が持続しないのである。物語が浅いこともあるだろうが、一番の原因は語り口だろう。テンポが悪いわけではないのだが、どうにもリズムが合わず、読んでいていちいち躓く。こちらの素養もあるんだろうけれど……ううむ。
一方、「銀山王」が比較的楽しめたのは、多少なりとも探偵小説的要素が含まれている点が大きいだろう。恋人も財産も一切を失ったヒロインが、どうやって富豪の一族に復讐を遂げるのか。コンゲームといえば褒めすぎだが、ちゃんと計略を用いるのがミソである。
ただ、令嬢が没落する前半があまりにくどい。その分、後半の反撃パートでのカタルシスに活きればいいのだが、もったいないことに著者自らさっさと計略のネタバレをするのがいやはや何とも。せっかくのサプライズも台無しである(まあ簡単に予想はつくけれど)。
ということで、いま純粋な娯楽小説として楽しむには、さすがに難しいものがあるのは否めない。とはいえ作品自体はまだまだあるわけなので、その辺り詳しい方、「これを読まないでどうする」というのがあればぜひ御教授いただきたいところである。
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